螺旋階段14
誰も求めてはいなかった結末。
けれど、歪(ひずみ)はますます大きくなり、全ての人間を不幸にしていく。
最初から狂った人間などいない。
狂わせるのは、人の弱さと小さなズレ。
そしてその狂いを癒すのは、人の優しさと愛情しかない。
けれど、そんなモノはもう、無い。
「太平の世とは、こうも苦しいものだったとは、知りませんでした」
虚ろに呟く幸村を一瞥して、小十郎は眼を伏せた。
政宗は幸村に対して乱暴だったが、抵抗に疲れ果てた幸村が眠りにつくと、そっと自室へと連れて行ってその寝顔を見つめる事が在った。
月明かりに浮かび上がる幸村の顔を飽くことなく眺め続ける政宗の表情の優しさに気づいたのなら、もっと違う結末があったのではないのだろうかと、思う。
『もしも』などという選択肢など、これからの未来には無いのに。
「地獄と言うのはとても広いのでしょうなぁ。自害などして佐助達と違う罪を犯して罰を与えられたのなら、彼らに会えなくなってしまう。……某は、生き続けるしかない」
破滅に向かって徐々に歩んでいく未来に攫われそうになって、己に言い聞かせるように幸村は呟く。
手にきつく巻かれた紅い鉢巻が、暗闇の中でぼんやりと浮かんでいた。
copyright c 2006 椿屋四重奏『螺旋階段』
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↓ゴマ様の【訳】より抜粋
こちらの小説は
『戦国・蒼→紅で狂愛監禁物。友情として蒼を好いていたが、監禁されて大嫌いになる。蒼は好きになって欲しくて甘味やいろいろ与えるけど、それでも紅拒絶。脱走したけど捕らえられて腱とか切られる。犯す時は切ない感じで。必死な蒼と拒絶の紅。「逃がさない」とのセリフ希望』
というリクエストをもとに書かせていただきました。
とりあえず、一番のご希望の『蒼を精神的にいためつけて、悲しく切なくなる話』になるように心がけたのですが。
緑紅描写はリクエストになかったのですが、前回の話の続編ということとその方が蒼は切なくなるかなと勝手にいれさせていただきましたm(_ _)m
こうしてリクエストを頂いて書く小説は自分では考えつかない世界を知れてとても勉強になります。
もっとたくさんの方の望んでいる話を文章にしていきたいと思いますが、もし実現できてももう少し先になりそうです。
最後のリクエスト、私も楽しく書かせていただきました。本当にありがとうございました。
補足ですが、小説の途中で幸村が例えで出した西洋の女性はユーディットです。
聖書の中の話ですし戦国時代の人が知っていることはないのでしょうが、例えにいいなと使わせていただきました。
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