螺旋階段10
「アンタは、その髪の毛から足の先まで俺のモンなんだよ!」
そんな政宗を、幸村は軽蔑の眼差しを向けた。
「貴殿には、何もあげませぬ。某の持つ物は何一つ」
じっと見つめ合う2人。
政宗が燃えるような眼で幸村を射るのに対して、幸村の眼はどこまでも冷たく、拒絶をするように政宗を瞳に映している。
「……さない」
声が漏れた。
そして、おもむろに持っていた刀で幸村の両足に切りつける。
血しぶきが互いの身体にかかった。
腱が切れたにも関わらず、幸村は痛みを忘れた顔で己に狂う政宗を見つめている。
「……逃がさない、アンタを。…絶たいに……にがさない」
「面白い事を言う。某が逃げられる所など何処にもないと申し上げたばかり。この世の某の居場所は、此処しかないというのに」
只、うわ言のように呟く政宗に対して挑発する言葉を投げつけ続けた。
「嗚呼、そうだ」
そう言うと、何を思ったのか幸村は折れそうな腕を伸ばして、政宗の右眼に優しく触れた。
そして、わざと慈悲のある口調で言葉を紡ぐ。
「竜の宝である、その左眼を某に下されば……永遠に貴殿の眼になってやらないこともない」
一瞬、政宗が息をのむ気配を感じた。
幸村の言葉の意味を読み解くように眼を細める。
「ふふっ。嘘でござるよ」
そう冷たく言って、指を離す。
「どんな宝を貰おうとも、某は貴殿に心を許したりはしませぬ」
幸村に触れたところから熱を帯びていく政宗をなおも見上げて、彼はとても楽しくなさそうに、笑った。
「……こ、のっ!」
これ以上声を聞きたくないとばかりに政宗は舌で幸村の唇を塞ぐ。
無理矢理に始まるいつもの情事を、幸村はただ冷めた眼で受け止めていた。
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