螺旋階段4


「政宗様、お時間です」

「……時間を遅らせろ」

「なりませぬ。今夜は戦国の時から交流のあった前田の風来坊と西海の鬼との宴会。友好関係に傷を作ってはいかがなものかと」

「……shit」


 小十郎の言葉に、政宗はしぶしぶと立ちあがった。

 そして、おもむろに幸村の手錠と足かせを離すと、部屋を出て行った。


「……」

 政宗の足音が遠のいて行くのを聞きながら、幸村は久しぶりに自由になった己の手をぼんやりと見つめた。


 全身がジンジンとしびれていて、感覚がない。

 まるで、自分の身体ではないようだった。


「ずっとあの状態だとアンタの身体に悪いと、政宗様が温情をかけたんだ」

「頼んだ覚えはありませぬ」


 小十郎の言葉に、幸村はそっけなく答える。

 しかし、思い立ったように小十郎を見上げた。


「今、慶次殿や長曽我部殿が来られているので?」

「ああ。皆、元気だ」

「左様でござるか」


 ふと浮かんだ微笑みは、戦国の世を思いだしたからだろうか。

 しかし、幸村が感情を出したのは一瞬で、すぐに表情を失くして壁を見つめた。


 そんな幸村の様子に、小十郎はそっとため息をつく。

 幸村が己の主に対して心を開かない気持ちは、小十郎自身にも理解できた。

 もし己が幸村の立場ならば、気が狂っていてもおかしくは無い。

 しかし、同情は許されなかった。


「政宗様のことだ。宴会を抜けてアンタの様子を見に来るだろう。それまでおとなしくしておくんだな」

 そう言うと、小十郎は部屋から出て鍵をしめた。

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