螺旋階段1



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『政→幸 戦国 狂愛監禁 ひたすらに求める政宗と、全力で拒絶する幸村』











 繊細な細工がされている盆の上に乗っているのは、南蛮の菓子。

 甘さが控えめでさりげないデザインを志す自国のものと違い、それはとてもけばけばしい見た目な上に口に、含むと容赦のない甘さが舌に広がった。


 唇についたクリームを舌で舐めとって、政宗はその慣れない味に眉を顰める。


 もとから甘いものは好きではない。

 団子でさえも苦手なのだから、『けーき』なるものは政宗にとって殺人的な甘さだった。


「喰えよ。毒なんか入ってねぇだろ?」

 そう言って食べかけのケーキを目の前の人間に突きだすが、返事はない。


「甘いもの、好きだろ?」

 努めて出した優しい声が虚しく響く。


 こちらになど見向きもせず、遠くを見つめたままの想い人の姿が政宗の視界を刺激するばかり。


「今更そんな抵抗したって無駄だってことは分かってんだろ? こっちを向け、――幸村」


 2人が居るのは2畳ほどの小さな部屋だった。

 窓もないため、まだ日の高い時でも灯りをともさなければ姿が分からない。


 閉じられた空間に浮かびあがる物も、布団が一組と小さな行燈という質素なものだった。

 しかし、壁に立てかけてある、屏風のように大きな鏡だけは異様な不気味さを湛えている。


 その鏡に映り込んでいる、片肘をついて幸村を見つめる政宗が豪華な着物をキッチリと身に纏っているのに対して、虚ろな瞳の幸村の姿はまるで囚人のようだった。


 あげた状態の腕は手錠をかけられて、天井から垂れる紐に結ばれている。

 服はかろうじて政宗に着させられただけ。無造作に着崩されており、至る所から除く地肌には小さな傷が所々に見えた。

 ほどかれた髪が大きく開いた胸元を隠すようにたれているが、無意味だった。


 足は動けない様に紐で縛られている。特殊な縛り方だった。

 足を開かせ、膝を立てた状態で太ももと踝をぐるりと紐で巻いて縛っている。

 意図しなくても足を広げて全てをさらしてしまう己の今の状態を嫌がり、幸村は数日間身をよじって抵抗し続けた。その時の傷が、今も体中に生々しく残っている。


「こっちを向けって」


 人形のように動かない幸村を見て、このままただの置物になるのかと不安を覚えた政宗は、おもむろに幸村の顎を持ち上げてこちらを向かせる。


 透明な瞳に政宗の整った顔が映りこんで。

 その時、幸村の瞳に色が入る。


 政宗の姿をとらえて、幸村は唇を歪ませた。

 政宗が部屋に入って、初めて見せた感情と声。


「要りませぬ」


 それは、軽蔑と拒絶の彩りだった。

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