How Wicked Ruler8
「なぁ、どうだ? 愛する主を目の前で犯される苦痛は」
服を脱がされ、腕を挙げた状態で手を縛り付けられた幸村に覆いかぶさりながら、政宗は勝ち誇った顔で佐助を見上げる。
「部下としても、恋人としても、アンタはコイツを守れない。これほどの屈辱はねぇだろ?」
命に換えても守りたいと願った主の腕を縛るのは、かつて彼が己にくれた鉢巻だった。
必ず生きて返すと誓った、恋人と己の心を結ぶ紅い布。
「殺す……コロスッ!!」
半狂乱になった佐助を眺めて、政宗は満ち足りた表情を浮かべる。
「出してやりてぇ所なんだが、幸村の〈拷問〉が終わるまでは無理な相談だ。せっかくなんだ、アンタも楽しめよ? 見てるだけだがな」
意識を失ったままの幸村は、これから己がどうなるのかまだ理解できていない。
眠るその吐息すら愛おしく感じて、政宗は彼の髪をそっと撫でた。
「ざまぁみろ」
そう笑って、政宗は幸村の額にそっと口づけした。
「……やっと、だぜ。真田幸村……」
全てはこのためだった。
殺したくて殺したくてたまらない幸村の忍をわざわざ捕まえて監禁したのは、幸村を己の元におびき寄せるためだった。
そして、己の意志で佐助との立場を交換させる必要があった。
誰よりも義理だてを重んじる愛しの人は、佐助の身代わりとして捕虜になったことにさせれば逃げ出すことはしなくなる。
拷問の代わりだと辱めれば、従順にその苦痛に耐えようとするだろう。
この日の本を統一させるほどの権力を持つ奥州は簡単に武田を潰すことができる。
幸村の心を占める、甲斐の虎も、猿も。
すぐに消せる。
邪魔者がいなくなれば、幸村は政宗の傍にいることしかできなくなるのだ。
自害など、決して許しはしないのだから。
「嗚呼……。やっと、手に入れられる」
恍惚とした表情を浮かべながら、政宗はそっと幸村の肌に触れた。
見るだけでもこんなにゾクゾクするのだ。
その身体に触れ、肌身を味わえたのならどれほどの喜びだろう?
幸村へ口移しするために、政宗は媚薬を自ら口に含んでその顔に近づけた。
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