トワ14
ポカンとした顔をする武蔵。
幸村も思ってもみないことを言われてビックリしていたが、おずおずと口を開いた。
「……何故、そのような噂になったのかは分かりませぬが、ま…伊達先輩と某はそのような関係ではありませぬ。噂はただの噂でありますれば」
「そっかぁ。よかった」
明らかにホッとする彼女の様子にどこか胸が痛みながら、幸村は頷いた。
「伊達先輩のことで心配されているのならば、心配は御無用」
「伊達先輩じゃないよ」
彼女はそう言うと、武蔵がいるにも関わらずに幸村の腕に絡みついた。
「本当は真田くんも学校で凄く人気なんだよ? 伊達先輩のガードで全然近寄れないけど」
「はぁ……」
何を言われているのかよくわからないと言った表情で、曖昧に相槌をうつ幸村。
「真田くんも今付き合ってる人いないんでしょ? なら、私と付き合ってよ」
「……え?」
ますます困ったことを訊かれて、眼を白黒させる。
助けを呼ぼうと武蔵の顔を見れば、彼はニヤニヤと笑っていた。
「……そ「あ、伊達先輩」
しどろもどろに唇を開いた幸村の声は、彼女の声で遮られた。
見ると、校門に寄りかかり、こちらを睨みつける政宗が立っていた。
「ま、政宗殿……?」
政宗は「何故ここに?」と、言おうとした幸村の前までツカツカと歩み寄ると、そのまま彼の襟首を掴んで持ち上げる。
そして、驚きのあまり行動が止まっていた幸村の顔に政宗の顔が近づいて来たかと思うと。
その唇が重なった。
「きゃぁ」
悲鳴を上げる彼女。
校庭がざわついていくのが、痛いほど耳に入ってくる。
何が起こったのか分からない幸村はポカンとした顔で政宗を見上げた。
「……shit」
政宗はそう呟き舌打ちをすると、幸村の腕を掴んで歩き出した。
「ま、待って下され! 一体……」
幸村の声に政宗は耳を貸そうともしない。
チラリと視界に映った武蔵は、これ以上ないほどに口をあんぐりと開けて己達を見ていた。
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