How Wicked Ruler5


「なぁ、幸村。良い眺めだろう?」

 政宗は残酷な笑みを浮かべた。


「あの男がどうなるかは、アンタ次第だ」


「佐助を、離してくだされ」

 幸村は気丈に政宗を睨みつける。


「どれほどの権力にも武田は屈しはしない。最後まで貴殿と闘い、戦場に骨をうずめる覚悟ができておりますれば」


「旦那、あの男の口車に乗せられるな! 良いか、どんなことを言われても承諾するんじゃない」


「やれやれ……しゃべれるとなればすぐにこれか」

 政宗は煩くてたまらないとばかりにため息をつく。


「でもな、困るんだ。戦場で死なれちゃぁ」

 クツクツと笑いながら、政宗は縄を握る力を込める。



「なぁ、幸村。交換条件といかないか? この男とアンタの立場を交換するってのは」


「なっ……」

 言葉を失う幸村。


「……アンタ、何が目的?」

 佐助と呼ばれた彼だけは疑いの眼で政宗を睨みつけた。


「良い条件だと思うぜ」

 読めない眼で、政宗は牢屋の中に顔を向ける。


「アンタは外に出て思う存分奥州と戦えるんだ。俺のことが憎いだろ? 今までの恨み、戦場で晴らせばいい。ここで犬死するよりもよっぽど有意義だと思うがな」


「……」

 政宗の言葉に考え込む幸村。


「旦那……」

 佐助はそんな幸村をどこか不安げに見つめる。


 そんな2人を見て、政宗は感情を失くした顔をした。

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