How Wicked Ruler4



「抵抗したって無駄なことはわかってるんだろ?」


 声が出ないため眼だけでも射抜かんばかりに政宗を睨みつければ、彼は呆れたような笑みを浮かべた。

「俺はこの日の本を統一しようって男だぜ? アンタがどんなに抵抗しようとも意味は無いんだ」

「……」


 それでも鎖をジャラジャラと鳴らし、政宗への殺意を隠さない男を見て、政宗は不愉快そうに鼻を鳴らした。


「俺だってアンタをここに捕えたくはなかったんだ。でも、仕方ねぇだろ? そうでもしなけりゃ、手に入らないんだからな」


 そう言って、傍に控えていた腹心に眼で合図をすると、男の猿轡が外された。


 久しぶりに曝された唇。

 息が、しやすい。


「俺は「勘違いするんじゃねぇぞ?」


 男の言葉を遮って、政宗は冷たく睨みつけた。


「アンタの猿轡をとったのは、アンタの声を聞くためじゃねぇ。アンタの絶望した叫びを聞くためだ」


 そうして。政宗が持っていた縄を引っ張ると、


「……佐助」


 男は、眼を見張った。


 政宗の後ろから、縄に縛られた最愛の人が己の視界に飛び込んできたのだ。



「佐助、……佐助」


 男の身体は震えた。

 恐れていたことが、現実になったのだ。


 他国の兵など人とすら扱わない、生まれながらの城主である政宗。

 そんな彼が、己の最愛の人を殺すなど、いとも簡単だ。


 嗚呼、この男は己に一体何を望むというのだろうか?


 いくら甲斐の中では強い立場にあるとしても、己の一存で武田の方向性を決めることなどできない。



 ならば、一体。

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