How Wicked Ruler3


 どれほど意志の強い男だとしても、何日も飲まず食わず寝ずでは次第にその力は失われていく。


 男の身体も限界だった。


 血まみれになった身体を力なくひんやりとした壁に押しつけながら、男は夢と現実の間を彷徨っていた。


 自害をしないようにとつけられている、血のこびりついた猿轡からはヒュウヒュウと掠れた息が漏れている。


 その肌の色は不健康に青白い。

 筋肉質だった身体もやせ細っていた。


 あの男の目的はなんなのだろうと、朦朧とした意識の中で考える。



 急に上田が奥州に攻められた。


 天下はすでに独眼竜、伊達政宗が支配しようとしていたこの世。

 唯一の敵対勢力である武田を滅ぼさんとするのは当たり前のことだった。


 武器をとって戦場へと掛けた己を、奥州の大将は不敵な笑みを浮かべて待ち構えていた。

 攻撃を繰り出そうとした己の背後から銃声が聞こえたかと思うと、両足とも鉛に貫かれていた。


 動けなくなり、舌を噛もうとした己の鳩尾を殴り意識を飛ばさせて、あの男は己をこの牢屋に押し込めたのだ。


 上田は……武田は、どうなっているのだろうか?


 もとより主のために捧げたこの命。

 いつで捨てる覚悟はできている。


 けれど、もう一度愛しい人の顔を見ることができないことが心残りだった。


 そんな時。

 カツカツと、足音が近づいてきた。



「よぉ、元気か?」



 己をここに閉じ込めて初めて顔を見せる、政宗が男の前に姿を現す。

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