そらすそらさない7
「安心してください」
今にも己からビルから飛び降りてしまいそうな2人をなだめて、医者は事務的に答える。
「怪我をしていますが、命に別状はありません。時間はかかりますが、身体は順調に回復するでしょう。……ただ、」
ひとつだけ。
扉を開けると、白が視界に飛び込んできた。
あまりの眩しさに思わず瞼を閉じてしまう。
心が黒い己にはこの白はあまりにも美しい。
これこそが焦がれていたカレの清らかな心。
「幸村……」
「旦那……」
カレを呼ぶだけで愛しさが心に溢れ出る。
己の心が少しでも浄化された気がして、2人はカレ以外の存在には見せない微笑みを浮かべた。
2人の声で、ピクリとカレの指が動く。
そして、ゆるゆると瞳が姿を現した。
赤みがかった瞳はまるで水晶のように透明で純真。
その瞳に己を映して欲しくて、2人はカレに近づく。
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