トワ13


「おい、珍しいじゃねーか。あの車がねーぞ」


 月曜日の放課後、下校の準備をしている幸村に武蔵が話しかけて来た。

「嗚呼、もう、よいのです」

「ふぅん」

 幸村が寝不足の眼を細めて微笑めば、武蔵はそれ以上は何も追及はしてこなかった。


「ならゲーセン行こうぜ。俺様、今レースゲームすっげーうめーんだ」

「そうでござるか。某で相手が務まるかどうか」

「へへ。ボコボコにしてやるぜ」


 武蔵と階段を降りながら、幸村は政宗のことを考えた。


 あれから2日経ったが、政宗からは何の連絡もない。

 何か気を悪くすることをしたのだと思うが、見当がつかなかった。


「ねぇねぇ、真田くん」

 下駄箱で靴に履き替えていると、同じクラスの女子が話しかけて来た。


「今日、暇?」

「今日は俺様とゲーセンだっての」

「そっか。なら、途中まで帰ろうよ」


 3人で校庭を歩きながら、彼女は幸村に積極的に話しかける。

「真田くんってさ、伊達先輩と仲いいんだね」

「まぁ、幼馴染みでござるから」

 今までも政宗のことをよく訊かれていた幸村にとっては慣れた質問で、彼はいつものように答える。


「ふぅん……。でもさ、噂では付き合ってるって話だけど……本当なの?」


「へ?」

「げっ!」


 頓狂な声を出す幸村と武蔵。

 彼女は相変わらず真剣な眼で幸村を見ている。


「だって、伊達先輩、どんな娘に告白されても『好きな人がいる』って断ってたらしいし。在校中もずっと真田くんのことを見てたっていうか……。真田くんも、女の子に興味なさそうだし」


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