そらすそらさない5
それから、カレは彼らにされたことを自分から行うようになっていった。
される前に口づけをして、する前に己の身体の血を流させる。
シーツに押しつけられる感触を覚えながら、包帯が肌に触れる感触に慣れながら。
嬉しそうにする2人を無感動に見つめていた。
けれど、次第にどちらの顔か分からなくなっていった。
その身体に触れたのは、本当に彼?
血まみれになったのは、本当に彼?
なら、何故2人の顔が重なっているのだろう??
口づけをしていても、手当として創を舐められても。
嬉しそうな彼の後ろで、他の彼が泣いているようで。
「ごめんなさい……ごめんなさい……ゴメンナサイ……」
カレは、己を責めるようになっていった。
2人のどちらかといても、強く瞼を閉じて耳を塞いで、外からの刺激を遮断した。
遮断しながら、自ら彼の身体にのしかかり、己の身体に傷をつけた。
2人が何を言っても、その大きな瞳が開くことは無く。
命令された人形のように、只、日々同じ行為を繰り返した。
それらの行為を繰り返すたびに、カレの心は壊れていった。
自分という存在が悪いのだとうわ言を呟きながら。
そして。
[ 35/194 ][*前へ] [次へ#]