そらすそらさない5


 それから、カレは彼らにされたことを自分から行うようになっていった。

 される前に口づけをして、する前に己の身体の血を流させる。


 シーツに押しつけられる感触を覚えながら、包帯が肌に触れる感触に慣れながら。


 嬉しそうにする2人を無感動に見つめていた。



 けれど、次第にどちらの顔か分からなくなっていった。



 その身体に触れたのは、本当に彼?

 血まみれになったのは、本当に彼?



 なら、何故2人の顔が重なっているのだろう??



 口づけをしていても、手当として創を舐められても。


 嬉しそうな彼の後ろで、他の彼が泣いているようで。



「ごめんなさい……ごめんなさい……ゴメンナサイ……」


 カレは、己を責めるようになっていった。



 2人のどちらかといても、強く瞼を閉じて耳を塞いで、外からの刺激を遮断した。


 遮断しながら、自ら彼の身体にのしかかり、己の身体に傷をつけた。


 2人が何を言っても、その大きな瞳が開くことは無く。

 命令された人形のように、只、日々同じ行為を繰り返した。


 それらの行為を繰り返すたびに、カレの心は壊れていった。

 自分という存在が悪いのだとうわ言を呟きながら。



 そして。

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