分別盛り(後編)16
留学を、やめた。
皆は驚いていたが、どうも気が乗らなかった。
それからの政宗は脱殻のようだった。
リャナンシーに生きる気力を奪われたかのように、ただ煙草の燃えかすと空の酒瓶の量だけが己の周りに増えていった。
己は、今迄、どうして生きていたのだろう?
どう息をしていたのだろう?
あの時に戻りたくて、裸で眠った。
けれど、彼はいない。
もし、あの時。
素直にこの想いを伝えていたのなら。
彼は、今も傍にいてくれたのだろうか?
どう結論を出しても未来の変わらないifを何度も何度も自問する。
そうして、気も狂わんばかりに彼を求めるのだ。
求めて求めて渇望して狂気にとりつかれそうになって。
気が付いたら、石の前に立っていた。
それから、彼は変わった。
食事も満足にとらず、夜も眠らず。
ただ、取りつかれたように、石を刻み付けた
そうして。
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