分別盛り(後編)5


「何か隠してる事、ない?」


 幼馴染みでルームメイトである佐助にそう訊かれた時、幸村は思わず持っていたコップを落としそうになった。


「……どうしたのだ。急に」


 平静を装って尋ね返せば「別に、なんとなく思っただけ」とさりげない答えが返ってきた。


「最近、晩御飯の時間になっても旦那が帰らないことが多いから」


 佐助の言葉に胸が痛んで俯いた。



 向かい合わせで座っている2人を挟んだテーブルには簡素だが栄養バランスの考えられた料理がのっている。


 料理の全てが手作りで、丁寧に味付けられていた。


 元から料理の好きな2人。


 幸村が大学に入り、1年先に入学していた佐助の家に住んでからは一緒に準備して、食事をすることが楽しみだった。


 けれどここ半年、幸村は講義が終わってもすぐに家に帰れない日々が続いていた。



「すまぬ……。最近、思うような絵が描けず、納得するまで放課後も練習しているのだ」


「ふぅん」

 幸村の嘘を佐助はご飯を口に入れながら聞いた。


 咀嚼している間の沈黙が居心地悪くて、幸村も箸を持つ。


 佐助の作ったおかずに舌づつみをうち、己の作ったおかずを冷静に批判する。



「旦那」


 この味噌汁、もう少し出汁を出すべきだったなとぼんやりしながら飲んでいると、佐助は箸を置いて真面目な表情を浮かべて己を見ていた。

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