分別盛り(前編)14
政宗の作品を見て、校内の人間は息を飲んだ。
眠る美少年の像。
スレンダーな中性的な肢体。
その顔は恍惚とした表情を浮かべていて、何とも言えない色気を醸し出している。
このような作品を、まさか学生が造り上げるとは思いもしないような傑作。
多くの人がその作品を讃えた。
再来年の留学は決まったも同然だった。
「誰かに、似ているような……?」
ふと、首をかしげる者もいたが、その美しさに気のせいだと首をふった。
ただ、一名を除いては。
「……旦那」
政宗の彫刻を見て、長時間佇む青年。
己の近しい人が、最近ふさぎ込むことが多くなったこと。
その仕草や雰囲気にえも言えぬ色気を纏うようになったこと。
彼の描く絵が最近全く別のジャンルになってきたこと。
鋭く、確信を持って。
その彫刻から読み取っていた。
複雑に絡み合い、形を変形させた歪な関係。
もはやそれ以上歪みようがない程にもつれ合った関係。
それはミシミシと不穏な音を立てて、綻びを生み始めていた。
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