分別盛り(前編)12
最初抵抗こそすれ、政宗が散々与えた悦楽を身体は覚えていっているようだった。
心で抵抗しながらも、身体は次を期待する。
そんな幸村の葛藤が肌と吐息から感じられ、政宗は笑う。
歪んだ関係。
それでも互いがいなければ存在できなくなるほどに重なればいい。
どこかで、そんな風に思っていた。
仰向けに眠る幸村の上に、うつ伏せで横たわる。
開いていた彼の手を己の指に絡めて、顔を彼の方に向ける。
至近距離で見る彼の寝顔はとても穏やかだった。
長い睫毛が影を落とし、唇が開いてかすかな吐息を漏らす。
その姿を、じっと見つめる。
眠るのがもったいなかった。
ゆるゆると、瞼が持ち上がる。
目を覚ました幸村は起き上がろうとするが、政宗の身体が覆いかぶさっているのに気づき、力を抜く。
そして、そっと政宗の方を向いた。
「ずっと、起きていたので?」
己の鼻と彼の鼻が触れそうなほど近い。
寝ぼけている幸村の瞳は甘く、普段政宗に向ける眼差しとは異なっていた。
「ああ、アンタを見てた」
政宗の言葉にふわりと微笑む幸村。
「まるで、恋人に言うような言葉でございますなぁ」
そう言うと、再び瞼を閉じた。
スヤスヤと、静かな寝息を立てる幸村。
そのゆったりとした時間が何よりも代えがたいモノの様な気がして、政宗は瞬く。
自分でも驚くほど満ち足りた気持ちが胸に溢れていた。
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