分別盛り(前編)10
「彼氏か?」
手を高く上げて携帯を幸村の手に届かないようにして、政宗は冷たく尋ねる。
「か、彼氏など……。ルームメイトでござる」
返してくれと政宗の肩にしがみついて必死に手を伸ばす幸村。
シーツがバサリと落ちる。
携帯電話に意識を奪われ、2人とも裸なことに気づいていない。
華奢な指が政宗の鎖骨に触れる。
幸村の身体は危うく、無防備に政宗の身体に触れていた。
「携帯電話を返してくだされ。貴殿が見て楽しいものは何一つござらぬ」
そう言いながらも、先ほどの電話の相手に気づかれたくないという様子がありありと見て取れる。
今の自分の状況を忘れるほどに、己との事実を隠したい人間がいるのだ。
その推測が、政宗の心の中に初めての感情を生み出した。
「気づかれたくないのか? アイツに」
政宗の静かな声を聞いて、ピタリと動きを止める幸村。
「秘密にしてぇんだろ? 隠していてやるさ。……その代り」
彼の腕を掴み、己の顔に近づけさせる。
政宗の素肌に己の身体が当たり、ようやく己も裸だと気づく幸村。
「協力してもらうからな」
頬を朱に染める幸村の顔を無理矢理に持ち上げると、その瞳には羞恥と恐怖の色が浮かんでいる。
「交換条件といこうぜ」と、政宗はサディスティックな笑みを浮かべた。
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