分別盛り(前編)9
「別に今更隠す必要はねぇだろ。全てを見せ合った仲じゃねぇか」
政宗の言葉で、幸村は顔を紅くしてこちらを睨みつけた。
「そ、某は」
「男同士だと間違いは起こらない。しかもアンタは何もしてねぇんだ。安心しろって。アンタはまだcherryだよ」
「そんなことでは!」
思わず反論しようとした幸村。
その時、床に置いていた鞄が鳴った。
「さっ……」
途端に、はじかれたようにそちらを見る幸村。
シーツを引きずりながら床を這い、鞄を開ける。
「さすけ」
携帯電話を耳に当てるなり発した言葉に、政宗の眉はピクリと動く。
「すまぬ、遅くなることを言っておらず……うん…。今夜は、いつ帰れるのか分からぬのだ……いや、違う。その……か、課題が、まだで……」
ポツリポツリと返答していく幸村。
親しげに話すその様子に、政宗の心は波立っていく。
おもむろに立ち上がって、幸村の手を掴んで己の唇に引き寄せた。
「!!」
一瞬、幸村は息を飲む。
政宗の舌が己の指の付け根を這い、掌に歯を立てていた。
「だ、だいじょうぶ……だ。迎えに…こなくて、も……」
慣れない感触に動揺する幸村。
それでも、電話の相手には悟られないように必死に平静を装う。
地獄のように長い一瞬。
「今日は、先に寝ていてくれ。……ご飯は、…うん。適当に、食べるから。……おやすみ」
会話が終了した途端に、政宗は背後から携帯電話を奪った。
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