分別盛り(前編)7


 少年が目を覚ますと、椅子に座った政宗がこちらを見下ろしてデッサンをしている姿が視界に飛び込んできた。



「Good Morning」

 鉛筆を動かしながら言う政宗に、慌てて壁にある時計を見れば針は20時をまわったばかり。


 あれから数時間は眠っていたらしい。


「……っ」

 体中に痛みを感じて、少年は小さく悲鳴をあげた。


「気楽にしてろよ。逆に、今動かれるとデッサンが狂う」

 そんな少年の表情を見つめながら、政宗はただその姿を画用紙に写し取っていく。



 少年は、一体何が起こったのか混乱していた。


 凄惨なことがこの身体に起きたが、処理ができずに感情が追いつかない。


 けれど、己を描く目の前の男も服を着ていない。

 それならば、先ほどのことはやはり事実なのだと思い知らされる。


 そして、朝には無かった己の身体の至る所に咲く傷。



「そん、……な」

 放心状態になる少年。


 その絶望した様子が何故か心地よくて、政宗はそっと目を細めた。


 何も知らない、穢れのないこの少年の新しい一面を刻んだ。



 その事実に、今まで感じたことのない満足感が胸に広がっていく。

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