悪讐(あくしゅう)7


「松永久秀。武田と、政宗殿の仇を討たせてもらおうぞ」


 未だに焦げた匂いをまき散らせながら、幸村は政宗の刀を構えて松永を見据えた。


「これは面白い。卿から依存を貰えば何も残らないと思っていたが……。卿もやはり虎だったのだな。使い慣れない彼の爪と共に命を掛けるか」


 幸村は、何も答えない。

 己に残された時間も体力も僅かしないのは分かっていた。


 雄たけびと共に真っ直ぐに松永へと走る。

 刀が松永の目の前へと迫った時、幸村の身体は炎に包まれた。


 それでも、その動きは鈍らない。

 只、渾身の力を込めて


――ドサッ


 松永の両腕を、切り落とした。


「なっ……」


「貴殿を、地獄につれて行きはせぬ」

 珍しく驚きに眼を見張る松永に対して、幸村は刀を落として呟く。


「某の大切な人々が待っている地獄になど、決して」


 そして、おぼつかない足取りで、独り眠る政宗の所へと向かう。


「……よかった。間に合った」

 まだ灰になっていない好敵手の姿を見て、幸村はほっとした表情を浮かべる。


「政宗殿、共に逝きましょうぞ。お館様や佐助が待つ……地獄へ」


 好敵手を愛しげに抱き起こすと、幸村は松永を見上げて不敵に笑った。


「己の欲に囚われながら、生き続ける事もまた地獄でござろう?」



 ボタボタと、大量に血を流しながら、松永は何処か納得したような表情を浮かべる。


「卿が眼を覚ましたのは、その依存からか」


 しかし、もう幸村にはその声は聞こえなかった。



「あつうござるな、政宗殿」


 未だに燃え続けている政宗の身体をそっと抱きしめて、幸村は微笑む。


「これからも共に地獄で責苦を受けるのであれば、某は何も怖くはありませぬ」


 そう妖艶に笑う彼。


 そんな彼に抱かれる政宗の顔にも、微笑みが浮かんでいた。


 まさに松永が壊し、手に入れたいと思った若き竜虎の姿。



「ふ……ふはははは」

 松永は初めて声をあげて笑った。


「面白い。貰えきれないわけだな」

 そう言うと、チラリと己の切れた腕を見た。


「大したことは無い。暇つぶしがなくなっただけだ」


 噴き出す血ですら興味がないかのように、男は低く笑みを浮かべる。


 そして、地面に転がる先ほどまで己の一部だった腕には目もくれずにその場から立ち去って行った。




 残された2人はなおも燃えたまま。


 蒼と紅。

 2つの身体は2色の灰となり、混ざり合う。


 燃え尽きた時。

 1つになった灰は新しい色を放ち、風に吹かれて流れ、

 消えた。









↓ゴマ様の【訳】より抜粋

こちらは、他のサイト様の絵チャにお邪魔した際、「松永に苛められる蒼紅って萌える」みたいな話をせんこ様からうかがい「では、書きます★」と頼まれてもいないのに私が勝手に申し出たのが最初でした。

話しているのはギャグチックだったのですが、松永さんが苛めるなら本気でその人の人格ぶち壊すだろうと、またもや勝手に考えてグロテスクな話にした次第です。

個人的にはエロさよりもグロさの方が得意と言うか書きやすいので、楽しんで書かせていただきました。

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