悪讐(あくしゅう)2


「随分とスッキリしたな」


 政宗は荒れ地と化した場所に独り佇んでいた。


「昔、この場所で同盟を結んだなんざ嘘みてえだ」


 武田が滅んだと聞いて1週間が経っていた。

 信玄の遺体は発見されたとの報告はとっくに聞いてはいたが、幸村の行方は分からぬまま。


 己の好敵手の死を未だに信じられない政宗は、こうして手がかりを探そうと甲斐の跡地まで訪れたのだった。



「ったく。容赦なく焼きやがって」


 辺りを見渡して、政宗は舌打ちをした。


 不要な物は容赦なく爆破させると言う松永の嗜好は本当らしい。

 彼の周りには、過去を連想させる建物も物も、何もなかった。


「……生きているなら、早く顔を見せに来い」


 そう呟いて、政宗は歩き出す。


 ふと。

 己以外の気配を感じた。


 立ち止って辺りの気配を窺う政宗。



「これはこれは。奇遇だな、独眼竜」


 この甲斐を滅ぼした張本人である男が優雅に姿を現した。

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