猿の眼(ましらのめ)13
そっと、己の手袋を脱ぎ棄てる。
おずおずと、佐助は幸村の頬に触れた。
弾力のある頬。
温かい体温。
そして、己を真っ直ぐに見つめるその瞳。
その穢れのない瞳に映る己の顔も、主と同じ人間の顔をしていた。
「死ぬ、などと簡単に思うな。俺は佐助と共に在りたい」
「それ……告白ってとってもいいの?」
「告白など……は、破廉恥なり!」
佐助の言葉で、途端に顔を真っ赤にさせる幸村。
「いや、さっきまでもっとすごい事言ってたじゃん」
「そ、そんなことはござらぬ!」
慌てて佐助の元から離れようとする幸村を、佐助はそうはさせないとばかりに抱きしめた。
「……ありがとう」
耳元でそっと囁けば、抵抗していた幸村の身体はピタリと止まる。
「ねぇ、旦那」
愛おしそうに頬ずりをしながら、佐助優しく幸村に語りかける。
「愛してみても、いい?」
[ 93/194 ][*前へ] [次へ#]