猿の眼(ましらのめ)13



 そっと、己の手袋を脱ぎ棄てる。


 おずおずと、佐助は幸村の頬に触れた。


 弾力のある頬。

 温かい体温。

 そして、己を真っ直ぐに見つめるその瞳。



 その穢れのない瞳に映る己の顔も、主と同じ人間の顔をしていた。



「死ぬ、などと簡単に思うな。俺は佐助と共に在りたい」


「それ……告白ってとってもいいの?」


「告白など……は、破廉恥なり!」


 佐助の言葉で、途端に顔を真っ赤にさせる幸村。


「いや、さっきまでもっとすごい事言ってたじゃん」


「そ、そんなことはござらぬ!」


 慌てて佐助の元から離れようとする幸村を、佐助はそうはさせないとばかりに抱きしめた。



「……ありがとう」


 耳元でそっと囁けば、抵抗していた幸村の身体はピタリと止まる。



「ねぇ、旦那」


 愛おしそうに頬ずりをしながら、佐助優しく幸村に語りかける。



「愛してみても、いい?」

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