猿の眼(ましらのめ)5
「アンタに構ってる暇はないんだよね、正直さぁ」
「生憎だが、俺もアンタが嫌いでね」
「徳川と結び、天下の2番手……嬉しいかい?」
「Ha! 石田の腰巾着に言われたくはねぇな」
「大将に何の用? まさか、こうして遠くで大将の姿を熱く見つめてたとでもいうわけ? そんな倒錯趣味を持たなくとも、俺様がアンタの言伝くらい聞いてあげるよ」
「忍びごときがでしゃばるんじゃねぇ。アンタなんかお呼びでない、You see?」
互いに皮肉を言いながら、佐助はギリギリと拳を握る。
本当に、忌々しい。
主の好敵手であり、一国の主であるコイツ。
主の心を占める男。
己がどんなに逆立ちしても到達できない位置に、この男は難なく立てるのだ。
視界が歪んでいく。
目の前の竜の姿が変わって、そして。
「……できることなら、大将がアンタの存在に気づく前に殺してやりたいよ」
一つ眼の、猿が。
ここに。
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