トワ7
慌てて準備をして幸村が玄関の扉を開けてみれば、政宗はゆったりと煙草を吸っていた。
「思ったよりも早かったな」
「先輩を待たすのは、無礼で在りますれば」
「気にする必要なんてねーのに」
ククッと笑い、「じゃぁ、行くぞ」と政宗はさっさと歩きだした。
「何処に行かれるので?」
「とりあえずcafeだな。アンタ、どうせ食べてねぇんだろ」
「それはそうでござるが……」
政宗の後ろを歩きながら、幸村はふと疑問に思って首をかしげた。
「車は如何なされた?」
「嗚呼」
ピタリと足を止めて、政宗は悪戯をする少年のような微笑みを浮かべる。
「今日は電車で移動しようと思ってな」
「何と、電車でござりまするか?」
政宗の言葉に、幸村はキョトンとした顔をした。
「乗り方は知っておられるので?」
「失礼な奴だな。電車の乗り方くらい知ってるぞ」
「切符を買う時は現金でなければなりませぬぞ」
「電子マネーがあるだろうが」
幸村は相も変わらずに不思議そうな顔をしている。
大きな瞳にクッキリと己の姿が見えて、政宗は笑った。
「してみたかったんだ。たまにはいいじゃねぇか」
「何を、でござりまするか?」
「それほどまでに電車に乗りたかったのか」と考える幸村の手を、政宗は優しく掴んだ。
「きまってるだろ」
絡まった指に驚いた表情を浮かべる幸村に笑いかけ、政宗は歩き出した。
「dateだよ。デート」
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