トワ7



 慌てて準備をして幸村が玄関の扉を開けてみれば、政宗はゆったりと煙草を吸っていた。


「思ったよりも早かったな」

「先輩を待たすのは、無礼で在りますれば」

「気にする必要なんてねーのに」


 ククッと笑い、「じゃぁ、行くぞ」と政宗はさっさと歩きだした。


「何処に行かれるので?」

「とりあえずcafeだな。アンタ、どうせ食べてねぇんだろ」

「それはそうでござるが……」


 政宗の後ろを歩きながら、幸村はふと疑問に思って首をかしげた。

「車は如何なされた?」


「嗚呼」

 ピタリと足を止めて、政宗は悪戯をする少年のような微笑みを浮かべる。

「今日は電車で移動しようと思ってな」


「何と、電車でござりまするか?」

 政宗の言葉に、幸村はキョトンとした顔をした。


「乗り方は知っておられるので?」

「失礼な奴だな。電車の乗り方くらい知ってるぞ」


「切符を買う時は現金でなければなりませぬぞ」

「電子マネーがあるだろうが」


 幸村は相も変わらずに不思議そうな顔をしている。

 大きな瞳にクッキリと己の姿が見えて、政宗は笑った。


「してみたかったんだ。たまにはいいじゃねぇか」

「何を、でござりまするか?」


 「それほどまでに電車に乗りたかったのか」と考える幸村の手を、政宗は優しく掴んだ。

「きまってるだろ」


 絡まった指に驚いた表情を浮かべる幸村に笑いかけ、政宗は歩き出した。



「dateだよ。デート」


[ 139/194 ]

[*前へ] [次へ#]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -