猿の眼(ましらのめ)4


――さすけ、……さすけ


 ふと、我に返ると、主が己の顔を覗き込んでいた。


「大丈夫か? 呆けていたが……」

 心配そうな表情を浮かべる主の顔。


 その顔は、


「何でもない。次のことを考えていただけださ」


 そう言葉を返して廻りを見渡せば、先ほどはあれほど群がっていた猿は消えていた。

 代わりに、沢山の人の遺体が転がっている。


「……」

 主はその状況を改めて眺めて、強くこぶしを握った。


 なんとか勝利したが、課題の残る戦。

 己の未熟さで多くの命を奪ってしまった事を心から悔いているのだろう。

 佐助はその背中をじっと見つめていたが、その場から姿を消す。


 そして、


「こんなところで見物なんざ、アンタも趣味悪いね」


 佐助は戦場を見渡すことのできる山の麓に姿を現すと、フツフツと沸き起こる殺気を隠そうともせずに目の前の人物を睨みつける。


「Ha! アンタがいつもやってることだろ?」

 佐助の殺気をもろともせず、鼻で笑いながら政宗は言葉を返した。

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