溺レル7
口を切ったのか、血をしたたらせて眠る彼はとても穏やかな顔をしていて。
「……何で、だよ」
残虐と慈愛の波にさらされて、政宗は強く唇を噛んだ。
優しくしたいのに、何故己は彼の前では鬼となるのか。
ただ、己の傍で笑っていて欲しいだけなのに。
「アンタが欲しい。……それだけなんだ」
眠れる彼の前でしか言えない本音。
己を映すその独眼が切なさで影っているのを、夢に引きずり込まれた幸村は知らない。
政宗の指に絡みつく幸村の髪はとても艶やか。太陽の光で刀の様な輝きを見せていた。
たまらなくなって、そっと長い髪に口付けをする。
「It has never let you go any longer. I don’t separate you eternally」
(絶対にアンタを逃がさない。離さない、永遠に)
己にしか分からない言葉で愛を囁く。
「Your falling in love has only me」
(アンタが求めるのは俺しかいない)
その声は甘く哀しく、まるで歌のように聞く人の耳に入る。
「I miss you,……my sweet」
愛おしさで気を狂わせながら、政宗はそっと幸村の頬を撫でた。
嗚呼、溺れているのは己だったのだと、今更ながらに思い知っていた。
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