死の勝利7

「……できることなら」


 今すぐ、幸村を喰らいたい。


 欲望の赴くまま、殺し、犯し、辱め、己の存在だけをその心にいっぱいにさせて。


 その肌身を味わいたい。


 けれど、

 幸村の中に佐助は存在しているのだ。


 あの男の肉塊が今、幸村の清らかな身体の一部分になっている。



「なんで、だよ。…俺は……」


 唇を噛み締め、政宗は膝をつく。


「政宗殿?」


 心配そうに己の顔を覗きこむ幸村の頬に触れる。



 身体からはみ出てしまいそうなほどの嫉妬心に息ができない。


 嗚呼、あの男の細胞が幸村の身体から入れ替わるのは何年後なのだろう。


 それまで、己はこの嫉妬心に苛まれ続けなければならないのか。


 傍にいるのに、己のモノにできない苦しみを味わい続けなければならないのか。


 それとも、今すぐに幸村を殺し、その臓物を掻き出したらあの男の肉が身体の一部になることを防げるだろうか?



「おれは、…アンタを」


 そこまで言って、政宗は苦しそうに首を振る。


 分っているのだ。


 幸村の中に墜ちた佐助は、もう離れない。


 己が幸村の身体を食べたとしても、己の中でこの主従は生き続けることになるのだ。



 己を器にして、2人だけの世界を。


 生きる。



「おれは……アンタを、殺せないんだ………」


 絞りるように声を出して、政宗はその場に突っ伏した。


 幸村の瞳に絶望が灯る。



「アンタがアイツを喰いつくすなら、おれは、もう……」



 独占、できない。

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