長期防衛・短期決戦2







「おはようございまする、家康殿!」

「ああ、おはよう、幸村」


あれから時は経ち、高校二年生になった二人。
お互いを名前で呼び合うようになってからも、もう随分久しい。


「おっはよ〜!幸、家康!」

「!慶次殿…っ」


二人よりも大柄な同級生が、背後から幸村の肩に腕を回す。


「…おはよう、慶次」

「は〜、二人が並んでっと一発で目が覚めるよ。もう、眩し過ぎの爽やか過ぎ!」

「ははは、何だそれ」


家康はいつものように笑ったまま――慶次の、幸村の肩に回されたままの腕から視線を外さない。


「Good morning〜真田幸村ァ」

「いッ…!」

幸村は後頭部に手をやり、「政宗殿!」


もう朝の恒例で、政宗がニヤニヤと幸村の後ろ髪を引っ張り弄んでいる。

幸村からの反撃を「Hahaha!」と笑って避け、さっさと先へ行ってしまう。
その後を、慶次が追いかけた。


「…毎朝、飽きないなあ」

家康が言うと、


「――もう、切ってしまいましょうか…」

と、幸村は溜め息をつく。


「いや、それは――」


「よお、お二人さん」

家康の言葉を遮り現れたのは…


「元親、今朝は早いなあ!」

「本当に!おはようございまする、元親殿」


「おお、はよー」

元親は欠伸をしつつ、幸村の頭にポンと手を置く。

昔からの無意識の行動で、幸村にとっても、もう自然になっている。


(……)


…家康の両手が、込められた力は軽いが拳に変わっていく。


「今日、転校生が来るらしいぜ〜?」


その言葉とともに元親の手が離れたので、家康の拳は解かれた…。












(て、転校生、って……)



ごくっと唾を飲み、家康は顔を上げる。

黒板の前に立つは、数年振りに見る彼の姿――


「石田三成くんだ。皆、仲良くな」


ごくシンプルな紹介と挨拶が終わり、三成は自分の席に…

――とは全く場所の違う、家康の方へツカツカと歩み寄る。


「おい…」

担任教師の言葉も無視し、家康の机へ手を乗せ、


「…久し振りだな、家康……」

「み、三成…、どうして…」


「探したぞ……貴様、何年も時間を無駄にさせおって。当然、覚悟はできているな」

と、その拳を振り上げる――



「やめて下され!」


「――!?」


三成がそのままの形相で振り向くと、その腕をしっかり掴む幸村の姿。


「何だ……貴様は。邪魔をすると言うなら、まずは貴様から」

「三成、やめっ」



「――何ったる、不届き!」

「ヴッ――!!」


くぐもった叫びをもらし、三成は……沈黙した。


「ゆ、幸村…」


「「「さすが…」」」


周りのクラスメイトたちも、慣れたもの。

幸村は気を失った三成の身体を抱え、


「乱心されたようですな…。先生、某、保健室へ連れて参りまする」

「ああ…」



……こうして三成と、家康――ではなく幸村――との戦いの火蓋は、切って落とされたのだった。














「家康ゥゥ!!覚ゴハッ」

「危なかった、家康殿!お怪我はありませぬか!?」

「あ、ああ…平気だ…」


「…さーなーだァァ…貴様、またも邪魔を」

「石田殿、何度挑めば気が済むのでござる?いい加減諦めて下され」

「うるさいぃ!私はそのためにわざわざ転入して来たのだぞ!貴様のお陰で、一つも家康に近付けんではないかァッ」

「家康殿には、指一本触れさせませぬ」

「黙れェ!大人しく奴を明け渡さんかァァ!!」

「ならば、また拳で勝負致しましょうぞ!」

「望むところだッ、今日こそ貴様を完全に屠ってやる!許しを請うても許すものかぁぁ!」

「おお、それはこちらも腕が鳴るというもの!さぁ、参りましょう!」

「うるさい、私に指図するな――」



……………



「幸、すっかり家康のナイトだなぁ」

「ははは…」


――あれから、三ヶ月。

三成は、家康に挑んでは幸村に阻まれる毎日を、飽きもせず送っている。


「家康、愛されちゃってるね〜ホント」

「ええ?」


家康は苦笑しながらも、慶次の何気ない一言にドキリとする。


「幸、前に言ってたよ。家康殿は、本当に立派な方だーって。同い年なのに、先のことまで見据えてて、誰に対しても優しいし心が広くて…」

「おお…そうか?」


内心、大手を振り上げ状態の家康。


「あと、破廉恥じゃないってとこが、一番好きなんだろうな!ホント、爽やか兄貴だもんな〜お前。俺らなんて、どれだけ幸から蔑まれてることか…」

「ああ…はは…」


家康は、手の平が温まるのを感じる。

…あの日掴んだ、あの熱を思い返して…。

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