スウィートロングラン5







「幸ー、そろそろ行こーぜ〜!」
「すみませぬ、もうしばし…っ!すぐ、洗濯物を…」

バタバタとリビングに飛び込む幸村だが、


「あ…っ!」
「へっへ、今日も俺の勝ち!」

──慶次の前のソファの上には、綺麗に畳まれた洗濯物の層が。

幸村は、むむむ…と唸ると、


「これでは、某の出番が減る一方でござる」

しかも慶次は覚えが早く、元々器用であるからか、既に幸村より畳み方が上手くなっていた。


「んな顔すんなよ〜。俺だって、良いとこ見せてぇの!幸ばっか俺を喜ばせるとか、ずりぃ!『二人で一緒に、ゆっくり修行しよう』って決めただろー?」


「…そうですな」

幸村も笑い、「ありがとうございまする、助かり申した!」

「おぅっ、どーいたしまして!…じゃ、行こっか?」
「はい!」


あれから、料理教室へは、慶次も一緒に通うことになった。レパートリーが増えたら、彼の叔父夫婦を家に招きご馳走するのが、二人の当面の目標である。



「…あ、そーだ。○○ちゃんに、まだ言われてる?掃除しよーかとか、ご飯のこととか」
「いえ…休みに入ってからは、お会いしておりませぬので」

そっかー、と慶次は頷くと、


「あの子さぁ、俺じゃなくて幸に気があんだよ」
「…はっ?」

ポカンとする幸村を、慶次は愉快げに笑って、

「だって、俺一回もそんなの言われたことねぇし。去年、お前と付き合う前に『手料理恵んで〜』って冗談で言ったことあんだけど、全然取り合ってくんなかったぜ?」

「──…」

幸村はまだ驚いていたが、


「し、かし…、後で気持ちが変わられたということも…」
「俺、んなモテねーって。幸心配してくれてるみてぇだけど、ホント全然だから。つーか、幸のが断然モテてて、俺の方がもっと男磨かねーと」

「そんな、」

焦る幸村に、慶次は相変わらずの笑い顔で、


「ま、お前が俺以外に行くとか、ひとっつも心配してないけどな。磨くのは、幸にもっとかっこよく思ってもらいてーからでさ」

「………」



(慶次殿は、いつも……)


自分を喜ばせ温かくしてくれ、安心する多くの言葉をくれる。

彼のようにもっと上手く言えれば、自分も同じだけそれを渡せるのに。
だが、慶次はその葛藤に対しても、幸村の歓喜へと変わるものを返してくれるのだ…




「では、某も負けじと男を磨きまする。…同じように、思って頂きたいゆえ」

「幸……」

道の往来なので抱き付きはしなかったが、慶次の心境は同等なのが、手に取るように分かる。


「やっぱ俺ら、相思相愛ってやつだよな!」


大好きな、その笑顔を燦々と輝かせる彼。
負けぬようにと、全力のもので応えた幸村だった。











‥余談‥



「〜〜♪」

「…慶次殿、その写真お気に入りですなぁ」
「うん、すっげー好き!」

↑幸村の部屋に入ると、必ずあの写真立てを、ニコニコ眺める慶次。


「ならば、ご自分の部屋にも飾れば…(苦笑)」
「いーのいーの!せっかく、こっちがあるんだからさっ」

「はぁ」

幸村は、小首を傾げるが、



(俺の場合、下に忍ばせる写真、一つに決めらんねぇしさ──)


そう心の中でほくそ笑むと、今日も慶次は、恋人の隠された愛に触れ、幸福に浸る。









‥余談A‥



「けー…じ、…、…のぉ…」
「ゆ、き……」

表情も身体もとろけきった幸村の姿に、心臓バックバクの慶次。

幸村のあのお言葉に甘え、キスも遠慮なく満足いくまでやることにした。

で、『ゆっくりと』二人で学んでいくため、そこから先も徐々に進み始めた彼らだが…


「──……」
「…幸?」

『すー…』


(…また……)


もう、これで何度目になるだろうか。…二人は、未だに唇しか重ねていない。

しかし、身体に触れるところまでは来ており、慶次は毎回愛を込めてじっくりと、隅々まで念入りに慈しむのだ。



(寝ちゃうほど、…)


…ってことだよな?と思い込めば、あの日まではゼロ以下だった自信も、めきめきと積もるというもの。

同時に、ますます頑強になっているらしい理性への褒賞に、今晩の眼福(幸村の艶姿)を与えることにする。


それを糧に、『その日』に感じるだろう、今までにないはずの歓びと幸せの訪れを、辛抱強く心待ちにする慶次だった。







‐2012.8.3 up‐

お礼&あとがき

ゆお様、相互ありがとうございます!

素敵リク「慶幸か佐幸で甘々」から、前者を選ばせて頂きました。ずっと書きたかったので、本当に嬉しくて(*^^*)
ですが、初めて書いたこんな雰囲気…すっごい緊張してます。こんな慶幸、どうなんだ… 慶幸好き様に、不快に思われてないだろうかと;

私利私欲詰め込んで、また自分だけ良い思い。本当は、大人描写(余談Aレベルの)を入れたかったんですが、手短にならざるを得なくなるので、やっぱそれはしっかり書きたいしな〜と(´∀`)

幸村、てっきり女友達が自分の留守中に掃除したんだと思って、少し切なかったんですな。こういう、生活力ない二人もありかなぁと。二人で楽しく頑張る^^

映画は、これから観る方には本当にすみませんでした!オチを使わせてもらって。有名な渋い俳優が主演の、和訳すると『巣』って意味のタイトルの洋画です。

幸村は、何となくホラー平気そう。なんで、この映画も全然でしたが、違う意味で怖くなったという。慶次は、ホラーも楽しんで観そうな気が^^ 怖がりなのも合いそうですが。

去年までは、まつ姉ちゃんが定期的に掃除しに来てたけど、新婚さんの邪魔をするような野暮じゃないので(^m^) 見本があの夫婦だから、慶幸は確実にバカップルになる運命なんだ。それが私の持論。幸村は、慶次の言うこと為すことがスタンダードだと思ってるから、素直に染まります。

あと、何でか慶次にオネェの友達を捏造したくなるんです。いつか、会話もさせられたらな〜。

ゆお様、こんなもので本当に申し訳ないですが、これからもよろしくして下さると幸いです^^ 本当に、ありがとうございました。


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