長期防衛・短期決戦1
ひろり様、相互ありがとうございます♪
家+三×幸、三角関係!…が、家→幸←三、って感じが濃くなっちゃいました…すみません(涙) 他、脇役数名登場。
ほぼ高校生設定。しょっぱなから、とんでもない設定が炸裂します(^q^) 本当に、色々謝らなければならないこと尽くしです(@_@;)
かつ、家康と三成のイメージが、おかしい気がします;
最終ページのご挨拶で、陳謝と言い訳を…っ
そして、長いです(泣)
(…全5ページ)
「…どうすれば、真田は笑ってくれるんだろうなぁ……忠勝」
ポツリと呟き、その広くて大きい背中へともたれかかる。
「……、……!」
「ははは…、すまない。…ワシらしくもない…」
目を閉じれば、いつも頭から…心から片時も離れてくれない、あの表情。
他の友人たちには数えきれないくらい様々な顔を見せているのを、何年も遠くで眺めては、あれが自分に向けばどれだけ――と考えない日は一日とてなかったほど…。
――原因は分かっている。
幼い頃は、彼の憧れる師へと近付けば近付く分、自分に尊敬と憧憬の眼差しを惜しまず送ってくれていた。
…卑しくも、それが欲しいがために、我を忘れるくらい毎日練習や鍛練に打ち込んでいたのが真実。
だが、いつしかそれが、彼の自分に対する気持ちを複雑なものに変化させてしまったらしく、今では道場以外でほとんど顔を合わせることもなくなり…。
中学校ももうすぐ卒業。
友人は多い。寂しい思いなどしたことがない。
しかし、幼いときに見たあの表情がどうしても忘れられず、どうにかまた親しくなれないかそればかりに腐心する毎日だが、何をしても逆効果になるばかり。
(こんなときは……やっぱりアレだな)
「――よぅし!…忠勝、頼む!」
「……!!」
普通の大人を一回りも二回りも超えるガッチリした彼の背に飛び付くと、すぐさま地面が遠ざかる。
…極秘事項ではあるが、彼は少しだけ、自分たちとは違っていて…
と言っても、まあ少々――空を飛ぶことができたり、ナイフが刺さらなかったり、武器的なものが身体に隠れていたり、小型爆弾がたまに飛び出したり…するくらいで。
他は、家康を心から大切に思ってくれる、家族と何ら変わりのない優しい存在だ。
(ああ――爽快!)
その背からひょいっと飛び降りると、地面に叩き付けられる寸前に、忠勝が再び自分を拾う。
そんなことを繰り返しやっていると――
(――あ…!)
誰も来ない山奥だというのに、小さな人の姿がポツリと見えた。
確実に、こちらに気付いている…。
(し、しまった…!)
どうする、逃げるか?
未確認飛行物体を見たか、目の錯覚かと思ってくれたら…
(えっ…、あれは――)
双眼鏡(忠勝装備品)を覗くと、何という偶然か……この心が離れて止まぬ張本人。
その顔その表情、その瞳が、自分の目へ一切のためらいなく、真っ直ぐに飛び込んできた。(レンズ越しだが)
(あの、顔……は…)
家康の喉がゴクリと鳴る。
……双眼鏡を握る手に汗が滲み、胸が、頭が熱くなる。
「…忠勝、降りてくれ」
「……!?」
忠勝は驚いていたが、彼の頼みには絶対服従…。
「――徳川殿……本多殿…」
幸村は目を丸くして、二人が地に着くのを呆然と見ていた。
だが、その顔は驚愕よりも好奇心の方が遥かに勝っていると窺える。
「あの……」
「真田…内緒にしててくれないか…?」
「――!も、もちろんにござる!」
幸村は慌てて言った。
(ああ……今これを…自分に向けてくれているのか…)
家康の動悸は、静かだが…速さを増していく。
「……」
幸村は、少しモジモジしながら頬を桃色に染め、輝く目で忠勝を一心に見つめていた。
「ありがとう、真田。…じゃあ、約束のお礼をさせてくれ」
「えっ?」
家康は幸村の手を取り、忠勝の背に彼を招く。
触れただけで火傷したのではないかというくらいの熱が伝わり、自分の手がそれと繋がるのは恐らくこれが最後だろう、と家康は思った。
忠勝は、少年二人を軽々乗せて青空へ飛び立つ。
「――すごい!…本当に、本多殿…っ!」
風に髪がなびき、綺麗な額がさらされる。
その下には、いつもより大きくなった二つの瞳に、中で輝く無数の光。
紅潮した頬に、笑みとともに大きく開けられた口。
そこからひっきりなしにこぼれる、感嘆と笑いの声とが…
――家康の目が、細くなる。
(そう……か。ワシは……)
「…徳川殿には、本当に敵わぬ…」
幸村が小さく呟いた。
「――え?」
「このようなことをいつも…。――そのお心も考えも、広く大きく…なるわけでござる」
「……」
幸村は、顔を前に向けたまま。
「…嫌味…でござったな。申し訳ござらぬ、某…。――徳川殿が、そのようなこととは関係なく、立派で懐の広い方だとは…分かっておりまする」
「真田…」
「某が心弱き…力も弱い小物であるゆえ、このような妬みにばかり囚われて。…本当は、徳川殿のように強く…」
「――……」
「…道場を辞めると聞き申した。…某のせいなのではと…」
「いや、それは違う」
家康は笑って、
「真田は怒るかも知れんが――元々、自ら始めたいと思ったことではなかったし…、高校に上がれば勉強が忙しくなるからな。一応ワシ、親父殿の会社に興味があるからなぁ…」
と、忠勝の肩を軽く撫でる。
だが、幸村は怒りなど見せず、
「そうでござるか…」
そのまま、目を伏せた。
「……まあ、ほんの少し下心もあったがな」
家康の苦笑いを、幸村は不思議そうに、
「下心…?」
ああ、と家康は、
「…もう、考えずに済む…。もしくは、昔のように……また親しくなれるかも知れない、とかな…」
「……っ」
幸村は、忠勝の背に頭を着け、
「申し訳ござらぬ…!誠に、申し訳…!」
「お、おいおい、ワシは誰もお前とは…」
常人よりも果てなく鈍感だと思って、口にしてしまっただけだったのだが…
「己が情けない…!某、本当は徳川殿にずっと憧れておったのです。それを、あのような態度にしかできず、何度も後悔しては、その繰り返しで」
「――さ…なだ……」
家康の声が、微かに震える。
「許して頂けるなど、図々しいことは考えませぬ。しかし、徳川殿がもし、先ほどの気持ちをまだ見捨てず、少しでも持って下さっておるなら……
今一度――…友に…」
――『友』――に。
(……そりゃぁ……そうだ、よな…)
家康は、誰もが好印象を受けて止まない、彼特有の眩しい笑顔を幸村に向け、
「ありがとう…」
……それから瞬く間に、二人の仲は幼い頃のもの以上に近くなっていく。
この秘密の時間もたまに訪れ、家康にとっては、何よりも至福のひとときになるのだった。
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