飛び越えられたボーダーライン6



「……昨日…?」

「小十郎、お前日記つけてんだよな?ガキの頃から」

それは言ったことがあるので、小十郎も驚きはしなかったが、


「あの日、俺が言ったのは遅い時間だった。で、お前は応えるまでに長ぇこと固まってたし、話が終わったのは日が変わってからだ。いつもなら前日の日付で書くんだろうに、さすがのお前も動転してて──これが俺の推理なんだが、どうだ?」


「…………」
「(う…)」

変わっていく顔色に後悔し、政宗はテーブルからソファに移ると、


「ま、まぁ、あれだ!別に、どっちでも良いけどな!今日だって、記念日みてーなもんだし、いっそのこと今日にしちまうか…ッ?」


…そして、本日二度目の彼からの抱擁。

政宗は、思ってもいなかった展開に凝り固まる。



「……ッ」
「ここ、こじゅろっ!?」


(この体勢は、ちょっ…)


あの夢が、とても平和に思える──小十郎の下で政宗は戦き仰いだが、ビクともせず、


「何という粗相を…こんな大事なことを、ずっと違えて…!」
「いい、いや、そりゃもう良いって!気にしてねぇから、離っ」

「無理です」
「…Ha!?」

聞き間違いだよな、と思いたい政宗だったが、その願いは儚く消え、


「どんな思いで、待っていて下さったのかと思うと…」
「(…や、ほとんど寝てたんだが)」

「ですので、離したくありません。…こんなにも、」
「……!?」

耳元で囁かれた言葉に、政宗は目を見開くと、


「どどどしたッ?よく見ろお前、俺だぞっ?これのどこが、かっ…」
「隠すことはあっても、嘘は申しません」

小十郎は笑みを浮かべ、


「蛍をくれたとき…想いを告げて下さったとき。繋いだ手に意識して下さって、…記念日に俺のために──全てが愛しくてならないんです。あなたという存在そのものが。ゆえに、」

「い……」
「…やはりお嫌ですか、こんな風に思われるのは」

「!じゃねぇ…っけ、ど」


(よ、よく真顔で言えんな……と)


本当に隠してただけだったんだな、と妙に冷静に思え、この体勢には構えたものの、それ以上何かしてくるわけでもない彼に、徐々に落ち着きを取り戻していった。


「Ahー…、今までが今までだったからよ。慣れねーっつーか…」
「はい」

「でもまぁ、…悪くはねぇ、な」

また可愛げのない言い方をしてしまった、と思ったが、ありがとうございます、と返され、肩の力が抜けた。

お見通しだと物語る瞳に、かえって羞恥を頂戴した政宗である。




………………………………




「Ahー…また、ドライブとかよ。別に、景色良いとこじゃなくても構わねーし。畑仕事でも、二人でやれんなら…」
「政宗様…行き過ぎる褒美は、お控え下され」

↑健気さに、内心キュンキュン。


「いや、何だかんだ言って、畑でのお前見んの好…」
「(──そのイメージを壊したくないがために、こっちは日々必死なんだ…)」

「…と、とか言ったりなー!(汗)…Hey、固まんなよ。つか、ずりーだろ、そっちは好き勝手言ったくせに、俺が言うといつもオメーは…」



「……(自重しない)猿飛が羨ましいですな」

「Haッ?」
「少し見習いたい気も…(するが、確実に却下)」

「おおおお前、何血迷って──おいしっかりしろ、小十郎っ!」
「冗談です。政宗様の方こそ、お気を確かに」

「俺はまともだ!お前な、あいつがどんだけか知らねーだろ!嫌だぞ俺っ、お前に噛んだ後のガム食わせるなんざ!」


「……それは……」


小十郎は、冗談でも二度と口にするまいと誓う。

しかし、彼のお陰で自分がいかに「男前」であるかを愛しい恋人に熱弁され、結局は良い思いをさせられた。




「…そーゆーわけで、俺は誰よりもluckyでhappyな奴だってことだ。You see?」

「俺も、同じく……です」


再び誓いを頭に降らせば、二人の間を、ほんのり甘い風が過ぎた気がした──。





飛び越えられたボーダーライン

(2個の気持ちの1つの行き先)










*おまけの佐幸*



・朝・

「おはよー、てか早く食べないと遅刻だぜ?俺様用あるし、先行くね」


・昼・

「やっぱ、これからは自分の教室で食おーと思って。ここ(新聞部室)誰も来ないけどさ、何があるかも分かんないじゃん?だから、明日からは旦那も、まーくんとかと食べてよ」


・夕・

「あ、先帰ってていーよ?今日はじっくり買い物したいし。待たせちゃうから」


・夜・

「おやすみー」










「………」

「やー、誰かさんにアドバイスもらってね?俺様の旦那への態度が、規格外だって。んなこと続けりゃ周りにバレるの時間の問題で、何より旦那に嫌われちゃうってさ。俺様、それだけは絶対嫌だから、改めようと思って」


「………」

「えぇ?違うよ、怒ってんじゃないってば。旦那が大事だから、俺様もよく考えたわけ。うん、別に気にしてないし、二人でコソコソ俺様のダメ出ししてたことなんて。俺様にも相談せずに、あいつのために破廉恥覚悟でキューピッドやろうとしたこととかも。全っ然気にしてないから」


「………」

「ほら明日も早いんだし、部屋戻って。俺様ももう寝るよ」


「──…」
「え、何?」



「…あれは、政宗殿に『のろけ』ては悪いと思って、話を合わせたのだ…ダメ出しなどでは……」


「…………」
「…………」


「──そうなんだ」
「うむ…」

「じゃ、」
「……しい」


「だん…」


「来年は、お前は学校にいない……今からもう寂しくてならぬ。だから、せめて昼だけでも一緒にいたいのだ。朝や夕方は我慢するから。…俺は佐助とともに食うのが何より好きで、お前の料理の感想をいち早く伝えたくて──佐助?


…さ、佐助ぇっ!?」



壁に頭をぶつけ始めた彼を何とか引き剥がすと、次に来たのは謝罪の嵐と、数々の愛の囁き。


その後、治るどころかひどくなった彼の様子に、忠告者は戦慄したが、


(…ま、『礼』にはなったみてーだな……)


と、無二の親友の増した笑みに、ポジティブで行くことを決め込んだのだった。







‐2012.6.22 up‐

お礼&あとがき

※タイトル(文中色付き二題)は、景様運営の【biondino】様から拝借。

景様、相互ありがとうございます!

「佐幸+小政前提で、仲良し蒼紅のガールズならぬボーイズトーク、バカップル等」という素敵なリクネタ頂きましたのを、見事に爆破してしまいました(T∀T)

他にもコメして下さった、蒼紅は百合っぷる並みに仲良しで、「何であんな奴と?」や「うちは堅物で、お前らみてぇにイチャつけねぇ」から、全部妄想させて頂きました。結果、これです(泣)

小政、絶対違うなと思いながら(汗) でも、リク下さって本当に嬉しかったです!無知だけど、自分なりに妄想して愛を注ぎました。

ずぇったい、景様の好みの政宗様じゃないだろうことだけが、誠に申し訳なく…!

景様、こんな奴で土下座ものですが、これからもよろしくお願いします。

本当に、ありがとうございました。


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