永久トライアングル4
(…やっぱ、あの距離にゃ、なかなか追い付けねぇか…)
政宗は、数日前から落ち込んだまま、とうとうこの日を迎えてしまった。
手には、随分前から用意していた幸村へのプレゼントが提げられている。
――あの試合後、挽回敵わず負けてしまった政宗。
今頃、二人は楽しい一日もそろそろ終わりを迎え、どこかへ夕食でも食べに行こうとしているのだろうか…などと思いながら、幸村の自宅へ向かっていた。
これだけは、やはり今日中に渡したい。預ける形で良いので、と出て来たのだが…
「――Ah?」
「……あ」
その家から、佐助が現れた。
羨ましいことに、二人は同居しているのだ…。
「別に邪魔しに来たわけじゃねーぞ、テメーじゃあるめぇし」
「いちいち一言多いよ。…何か用?」
「いや…」
(こいつに渡しゃ、隠滅されかねねぇ)
「…幸村は?今から飯でも行くのかよ」
「うん、そう。俺様、ちょっと忘れ物しちゃって〜、旦那に待ってもらってんだよね」
「Huーm」
「あ、今日どんなデートしたか聞きたい?」
「…うるせー…要らねー」
「あ、そう。まあ教えてやるつもりもなかったけど。…だって、あんな可愛い旦那…想像すらさせたくないし」
「……」
「ねー、もう諦めたらぁ?どうやったって、俺様に敵うわけないって」
「……」
「――てか、どこ行くの?家、そっちじゃねーじゃん」
「…テメーこそ。さっさと行けよ。何ついて来てんだよ」
「いや、何言ってんの?俺様、たまたま…
――もしかして、慶ちゃん家?」
周りの道を見ながら、佐助が問う。
「小十郎に頼まれてよ。前田先生たちから何か預かって来いだとかっつう…」
「へ〜え…」
「――だから、何でついて来んだ…?」
「…俺様も、慶ちゃん家に用事」
「――Ha?」
何言ってんだコイツは、と思っていると、
「……」
佐助は、小さく息を吐き、
「…実は、今日デートできてない」
「What…!?」
政宗の左目が見開かれる。
佐助は、がっくりと、
「急に、お館様との用事が入っちゃって――俺様は、留守番。…あの人にゃ、俺様も敵わねーもん…」
(マジかよ……!)
政宗の心が、みるみる晴れていく。
「でも、プレゼントはもう渡したもんね!…それ、預かっといたげるよ?」
「…ぜってぇ渡さねぇ。――で、何で慶次ん家?」
「電話あって、おかず作り過ぎたから取りに来ないかって。二人が帰って、まつ先生の料理もあれば喜ぶだろうしな〜って」
そうこうする間に、前田邸に到着した。
『今、手が離せなくてさ!開いてるから、上がって来て!』
と、インターホンからの慶次の声。
「お邪魔しま〜す」
立派な一軒家に二人してお邪魔するのだが…
(…やけに静か…)
『パーン!』
「「……!?」」
――突然のクラッカー音。そして…
「「「おめでとー!」」」
パッと部屋の明かりが点いたかと思うと、中にいた人々からの祝福の声と、拍手の嵐。
いつもの友人三人、小十郎、利家にまつ、信玄に謙信、その他の親しい友人たち――
「おめでとうございまする、お二人とも!」
幸村が、満面の笑みで二人を出迎えた。
「Ah……?」
「おめでとう…って。今日は、旦那の…」
「ほら――これだ!」
と、幸村は二人に茶色い封筒を手渡した。
…それぞれの宛名が入っている。
「……?」
二人は封筒を確認するが、送り元先がどこかを知った途端、
(まさか――!?)
ガサガサと中の書類を出し、同時に硬直する。
「いや〜、いよいようちの学園からスターが誕生たぁねぇ」
慶次が、「いよっ!」と二人をもてはやす。
それは、数ヶ月前に二人が受けた、ある舞台のオーディションの合格通知であった。
似た者同士の二人は、見る夢まで同じであり――当日、会場で一緒になったときは本当に唾を吐きたくなったものだが…
「何で二人とも合格…?」
「ほら、ダブルキャストだってよ〜!」
「お前ら、ホンット仲良いよな」
「幸村と片倉先生が隠しておってな…。今日の祝賀会を企画したのは、幸村らしいぞ」
元就が言うと、幸村は、
「お二人とも、騙して申し訳ござらぬ!どうしても二人一緒にお祝いしたいと我儘を申しましてな…。今日、どちらも予定がないというのは以前から聞き及んでおったことでしたので…」
「わざわざ、自分の誕生日にのう」
信玄が、苦笑しながら二人に言うと、
「…随分と愛されているのですね…二人とも」
と、謙信がにっこりと微笑む。
「さあさあ、ご飯に致しましょう!今晩は、まつめと…若子殿も腕を振るって下さったのですよ」
テーブルに並ぶ、見るも豪華な料理の数々。
「え!?旦那がっ?」
「俺のために…」
「いや、アンタだけじゃねーでしょーが、俺様も」
「この間のお礼も兼ねてでござる!」
「そりゃあもう、台所から火が上がるのではないかと思うほどの真剣振りだったぞぉ」
利家が笑う。
「政宗様の好物を、わざわざ俺に聞いてまで…」
「!!」
小十郎の言葉に、危うくプレゼントを落としそうになる政宗。
「まあ、どうせだから、幸の誕生日も合同でってことで!」
「……」
「……」
「――佐助?……政宗殿…?」
立ち尽くしたままの二人を、幸村が窺うように覗き込むと…
「旦那!」
「幸村!」
「「この舞台が終わって、俺の方が有名になったら――」」
最後の最後まで、似た者同士の二人。
後に分かったことだが、政宗のプレゼントは、佐助が幸村に渡した物と色違いの全く同じものであったらしい。
――だが、幸村はどちらもそれを大切に使う。この先何年も、色が褪せてしまっても。
…あの折り鶴は、大きいもの一つ、小さいもの三つが、大切に箱に入れられ、これからも同じ年月を仲良く眠り続けることになるのだった。
‐2011.7.24 up‐
お礼&あとがき
はるひ様、相互ありがとうございます!
うあ〜、こんなものになりまして申し訳ないです(;o;)
取り合い、できてねぇぇ(泣) ギャンギャン言ってるだけだぁ…と、最後に気付いたという; 二人ともかっこよさ皆無(^q^)
幼稚園は、ほんの思い出♪にしたかったつもりが、何でかあんな長くなり、そして全部長くなった…; 大分好き勝手させてもらってすみません!オーディション等あやふや描写、無理のある展開と終わり方、ご容赦(^^;
これからもよろしくお願い致します(=^▽^=)
本当にありがとうございました♪
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