三年目の○○○?5
「旦那…」
(つまり、そんだけカッコいい俺様に痺れちゃって、この愛の大きさを理解してくれたってことだよね…!?)
と、デレデレ顔で叫びたかったが、ここで我慢せねば一生後悔しそうな予感がしたので、必死に堪える。
「…だから、本当にすまなかった。お前より、俺が先に謝るべきだったのだ。
──それから、」
え?
と、佐助が幸村に視線を再び向けると、
(…………え??)
唇に残る柔らかな感触が、佐助の思考を静止させる。
…まだ、目をつむってもいないのに。
よって、頭は働かずとも、この目はしかと捉えていた。その、一挙一動を。
「じ…時間をかければ、俺でも…、…嫌だ、などではなくて…、ゆ、優に五日以上はあったからな、ちゃんと、できた…だろう?」
「だ、…んな…」
佐助の頭は飛び過ぎたらしく、かえって、至極まともな顔で、幸村を見つめ返す。
幸村は、それに赤面が増してしまうが、
「お前にされて嫌だったことなど、何一つない。……やっと、触れられた…」
と、はにかみ──
「佐助、顔が…」
「気のせい気のせい気のせい!旦那は、天井の模様の数でも数えてりゃいーの!」
「(…無地だが)」
「〜〜〜ッ」
唸る佐助に眉をひそめ、
「あ…、やはり変だったか?…気持ち悪かったのでは…」
初めてしたからな、と睫毛を伏せるが、
「…なわけないっしょ……も、嬉しさとか、幸せとかで死ぬ。…腰抜けたかと思ったし、」
それを聞き、幸村はほっとした表情で、
「であるから、大変なのだぞ?俺は、お前に毎日そんな…腰が抜けるどころでは──」
もう(聞くのも)耐えられなかった佐助が、上からそれを塞いだ。
まさかの、自分が翻弄されている事実を決して覚らせぬよう、余すところなく技巧を駆使し、中を甘く溶かしていく。
同じくとろけていく表情を目にし、ようやく佐助の顔から、『普通ではない』色が薄まり始めた…。
「さ、すけ…?…そろそろ、寝ないと…」
「明日、全部休講でしょ?」
「おれは…、良いが…」
佐助はニコッと笑い、「俺様も、明日代休。のために、出張志願したから」
「っ?そうなのか?」
「うん。だって、旦那帰るの遅いと思ってたからさー。今の状況、さらに深夜だったと思うんだよね。で、約一週間振りじゃん?絶対一回じゃ終われるわけないし」
「──…」
(…あら?)
「旦那、聞いてる?どしたの?『破廉恥』は?」
「ん…」
しかし、幸村は案の定聞いていなかったのか、もしくは、明日佐助と一緒にいられるのが、素直に嬉しかったのか、
「…良かった。
では、…ゆっくりできるのだな…」
「………」
──その一言と笑みは、佐助の脳内日記へと新たに記録される。
数時間前からだけでも、既に数十枚に達していたが、いずれそれらは、『幸村を安心させるあの顔』に繋がるので、結果としては悪くないだろう。
三年目にして初めて起こった、犬も食わない何とやら。
馬鹿馬鹿しい、これ一点に過ぎぬだろうが、当人たちにとっては、大いなる愛の試練である。
佐助が稼いだ残業代は、来月のクリスマスを豪華にするためのもの。
…で、この思い出は、毎年その日に語られるようになり、愛を深めるアイテムの一つになったのだという…。
‐2012.3.25 up‐
お礼&あとがき
けむ様、相互ありがとうございます!
「佐幸で、些細な事でケンカしたけど結局お互い同時に謝って仲直り」みたいなので、ギャグでもほのぼのでもシリアスでも何でも。
という素敵リクで、「もしくは他のシチュでも」とお優しいお言葉頂いていたのですが。
結果がこれで、本当に申し訳ないです(涙)
最初は、下らんことで喧嘩する学生佐幸のイメージで、ギャグほのぼののつもりだったんですけど。
どれにも当てはまらんような、ただの痴話喧嘩…!ひぇぇ(><)
全然爽やかじゃないしで。けむ様宅の佐幸みたいにしたかったんですが、激しくチープな恋愛?小話。ネタみえみえで;
幸村は、嘘つく毎日に精神衰弱してて、「もう、やめよう…」と決心したみたいです、あの日。で、翌日正直に話して謝ろうと。映画見た後に、土下座するつもりだったようで。
佐助は、疑いそうになるのから逃げてたのかな、多分。学祭終わるまで、金稼ぎに集中しようと。で、幸村の苦手なイチャイチャも控え、禁欲してみた。
会社は、こんなんやったら二人の未来明るいかなぁとか願望。
けむ様、こんな奴ではありますが、これからもよろしくお願いします(><)
本当に、ありがとうございました。
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