アイドル争奪戦8



「でも、ちょっと興味あるな。誰が一番演技が達者で、幸村が『嫌だ』って思ったのか」

元親が言うと、他の全員も少なからず興味ありそうな顔。


「演技は、皆上手だったと思いまするよ。完全に騙されましたので」

幸村は苦笑し、


「…やはり、黒田殿…ですかな。安心致しました…、嫌われたのかと思うて」

「うぅ…!」

官兵衛の良心に、またも矢が突き刺さる。

「すまん、本当にすまん…!」と再び何度も謝り、他の彼らからは、冷たい視線。
何故、ライバルから最も遠い彼が…と、不服さの空気で一杯だった。


「Hey、幸村俺は?」
「旦那、俺様のアレ、すっげぇ嫌がってたじゃん?」
「いやいや、ワシなんか、はっきり『嫌だ』と言われたぞ?こ、『好む』とまで」
「残念だったな、私も『嫌だ』と言われ済みだ」
「お、俺だってさぁー…なぁ、幸?」

もう反省の色などなくし、詰め寄る五人。


うーむ、と幸村は再び苦笑し、


「嫌だとも思いましたが…、徳川殿は、その…野性的と申しますか、つい、見惚れてしまいましたし、佐助も、大分恥ずかしかったが、…嬉しかった、ような…。まぁ、嘘であると分かって、やはりなとも思ったが」

「さ、真田…」
「旦那ぁ…(ああぁ、言いてぇ…嘘じゃねぇって…!)」

家康は、素直に頬を染め、嬉しそうに笑う。
もう一人は、ポーカーフェイスで、胸中大嵐。


「えと、…政宗殿と、石田殿は、

か……、


かか、可愛らしゅう、…ございました…!」


「「──!?」」

何だと!?と叫びかねない形相になる二人に、幸村は『うわっ』と声にならない悲鳴を上げつつ、


「すす、すみませぬ!しかし、悪い意味ではなく…!政宗殿は、某だけにしか見せぬと言ってくれたのも、嬉しかったですし、石田殿は、とても優しくて…」


「…心外だが、」
「まぁ、勘弁してやろう…」

ぶちぶち言いながらも、少しだけ口元を緩める二人である。


「結局、俺は『格好良い』も『可愛い』も得らんなかった。あんなキャラだしな…」

しょぼくれる慶次に、官兵衛と元親が励ますよう肩を叩くが、


「慶次殿は、最後の最後で、台詞にそぐわぬ哀しい目を見せたので…、苦しそうで、…某も苦しくなって。…どうにかしたくて、ああするしか、」

「ゆ、幸、ダメだよ!お前、その考え方危険だって!相手の思うツボじゃんかっ、ヤンデレなめてちゃいけねーよっ!?」

「?」

首を傾げる幸村だったが、そんな彼を見ていると、やはり大した演技力だったな…と、浮かぶばかりだった。



「我に言わせれば、皆手ぬるかったがな」

元就の冷めた声に、全員が注目すると、


「政宗は、もっと情けない姿を見せるべきであったのに。それに、誰が『抱き付け』とまで申した?やたら密着しておったし…あまつ、幸村に抱き上げさせてまで」

「あぁ!?」
「貴様…」

「うるせぇ!別に違反じゃねんだから、関係ねーだろーが!」

佐助・三成による制裁が、政宗へ贈られる。


「黒田は、もっと冷淡に──まぁ、到底無理な話であったか…。貴様は、いかにもドMだと全身で物語っているものな」

「これでも、精一杯やったんだ…!というか、取り消せぇっ!小生はノーマルだぁぁ!!」


「石田は、己のことを『みーくん』と呼ぶのを抜かっておったぞ。赤子言葉を話すのも」

「まずは貴様がしてみせろ。そして、散れ」

「良いのか?そのような口を聞いて。──幸村、目を閉じた後、」

三成が投げたペンを華麗に避け、「…次の機会に、ゆっくりとな」と、元就は不敵に笑う。


「徳川は、嫌がられたことで勝利を確信し、演技が乱れた。幸村に気に入られていたと分かっただけで、あの有り様であるし」

「し、仕方ないだろう?慣れない演技に、もう一杯一杯だったんだから」


(…でも、真田はああいうのに見惚れるのか…)


家康は少し心動かされたが、やはり危険な賭けには手を出さないでおこう、と抑えた。


「佐助は、腹が立つほど難なくやってのけたな。しかし、もっと歯の浮くような台詞を、吐いてもらいたかったのだが」

「けど、あんまりだと、旦那に日本語として通じない気がしてさぁ。結構知恵しぼったのよ?」


(((…確かに)))


一同、心で頷く。


「慶次は、幸村からダメ出しされたので、…だが、やはりお前らしく中途半端だったな。もっと、狂気じみたストーカーが理想だったが」

「時間があったら、やれたけどな」

サラッと言う慶次に、皆が意外そうに視線を向けるが、


「ぅ、ウソウソ!やんないやんない!もう、絶対やんないから!」

幸村の表情を前に、容易く完敗する黒い戯れ言であった。



「嫌な思いをさせてしまったが、今日は本当にありがとう。お前と一緒に過ごせて、嬉しかったよ」

「また、遊びに来ても良いか?合併まで…」

「私は忙しい身だ。…貴様から顔を出せ」

家康、官兵衛、三成が言うと、「もちろんでござる…!」と、本当に嬉しそうに笑う幸村。

三人は、(三成でさえも)ホッとした顔になり、温かい空気が蔓延する。



「Cuteも悪くねーな、幸村に思われんならよ。だってよ、俺があいつを思うときみてぇな感じなんだろ?つまり、両想いってことだよな。なぁ?」

「旦那ったら、キザな俺様にときめいたんだね〜。こりゃ、路線変更した方が良いかな?すげぇ寒いけど、嘘ってわけじゃないしー、それで好かれんなら、本望だし?」

「幸ってば、どこまで純なんだろねー?ますます惚れちゃった。相手の弱味に付け入るなんざ、最低だけど…、つかさ、もしかすっと、俺だからそう思ってくれたのかなっ?な、どう思う?」



「…勝手にしてくれ」

元親が、深々と溜め息混じりにこぼした。



(…悪化させてしまったか)


また面倒が増えたな、と思う元就だが、



「皆、何をコソコソ言っておるので?」

不思議そうに、だが興味津々に瞳を輝かす彼。


──これの前では、致仕方あるまい。


それに、この戦いほど勝敗の結果が見えぬものはない。


誰が一番相応しいのか見極めがつくまで、引き続き、高みの見物を楽しませてもらおう。

そうほくそ笑む元就だが、同時に優勝者を陥れる策をも練っていることは、誰も知る由がなかった…。







‐2012.3.17 up‐

お礼&あとがき

ゴマ様、相互ありがとうございます!

長文にも程があり、本当に申し訳ありませんでした;
奴らが主張激しいもんで、関ヶ原組が大人しくなってしまったんですが、自分的には愛を注ぎました。

ゴマ様の政宗様とは大違いで、恐縮なのですが…っ。自分だけが、怖がりな彼を見てみたかった…という。本当は、彼と官兵衛の話の長さが理想だったんですが、後は上手くいかなくて;

家康と佐助は、悪戦苦闘かつ難産だったんで、絶対おかしいとこ多いはず。あと、慶次の演出も全部作り物。彼が一番演技に苦労しただろうゆえに、小物でごまかしたんだと思われます(^ω^)

三成は、もちろん唇…の、すごい端っこの方にチュウしました、多分。
政宗のことは、手放しで可愛いと思ってしまった幸村。きっと良い兆候^^ 官兵衛のような人が、お気に入りらしいので。

ここまでされても、友達的な意味でしか捉えてない幸村。
最後の元就の彼らへの感想は、私の願望も入れまくりです。本当は、それくらいひどい崩壊をさせてみたかったんですが、収拾つかなくなるのが目に見えたので。

ゴマ様、他にも色々謝らなければなんですが、もう何でも仰って下さい(^^;
こんな奴ではありますが、これからもよろしくお願いします。

本当に、ありがとうございました。


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