唯一がくれる数多1


漫遊様、相互ありがとうございます♪

佐幸で、ほのぼの。(他、お館様登場)

詳細を言われなかったのを良いことに、かなり自分勝手な設定&話。ほのぼのなのだろうか…(;_;)

幼児〜小学生。(←この辺がホント勝手)

佐助の背景が無理あり過ぎです、すみません。相変わらず子供らしくない二人。ですが、恋愛的色気なし;

佐→←幸な感じで、むしろ「武田家」なお話です。
二人の性格、捏造激しいです。乱文m(__)m

漫遊様、現パロの上にこんな設定で、本当に申し訳ありませぬ(><)


(全5ページ)














(………)



壁に付いた太い柱に、そっと手を這わせる。


“幸村──6才、7才、8才、9才、10才”

“佐助──7才、8才、9才、10才、11才”


一年ごとに高くなっていく、削った跡。
名前等は、落ちにくい濃い鉛筆で、記されていた。

──もうすぐ、この家とはお別れ。

佐助の脳裏に、数年前のあの日の出来事が、鮮明に浮かぶ…












「幸村、『佐助』じゃ。苗字は『猿飛』。どうじゃ、格好良い名じゃろう?」


玄関先へ飛び出て来たその子供は、初めてだったに違いない状況に、驚いていた。

元々大きいのだろう、二つの瞳。それが一層広がるのを、虚ろな目で眺める。
離れていても、そこに自分が映る様が、よく見えるようだった。


「さるとび、さすけ……カッコいいでござる、おやかたさま!だれなのですかっ?」

幸村、と呼ばれた彼は、臆することもなく佐助に近寄り、


「ころんだのですか?どろだらけでござる」

と、おやかたさま──信玄を見上げる。


「ああ。飯はたらふく食わせたんじゃがな。幸村、風呂で洗ってやってくれぬか?」

彼に仰せつかったから、というのも大きかったのだろうが、


「はい!いこう、『さすけ』!」


(──…)


にこやかに差し出された手と、明るい声で呼ばれた自分の名。

遇ったこともないそれらに、どう応じれば良いか分からず、ただ立ち止まる。

だが、悩む間もなく手を取られ、わけも分からぬ内に、家の中に引き込まれていた。










「さすけは、どこのようちえんなのだ?なにぐみ?さるとびだから、さるぐみなのか?」
「……?」

「それがしは、こんどゆきぐみになるのだ!ゆきむらのゆきだから、うれしいんだ!いままでは、つきぐみで、そのまえは、はなぐみだった」
「…ゆき…、…ふるやつ?」

寒い日によく降るあれだ。あんなものと同じが嬉しいなんて、変わっていると思った。


「うむ!あ、でも、ひらがなだけがいっしょでな?かんじはちがうぞ。かんじ、しっておるか?それがし、すこししっておるのだ、すごいだろう?」

えっへん、といった風に覗き込む彼。
…コロコロ変わる顔に、目が眩む。

初めて経験した風呂場の熱気のせいもあるのか、頭がクラクラした。


「ゆきむらのゆきは、『しあわせ』というじだ」
「しあわせ…」

彼は誇らしげに、「よいだろう」と、鼻の穴を膨らませる。

しあわせ、なんて初めて聞く言葉だった。
どんな意味なのかは知らないが、…何故か、似合っているとは思え、

冷たい方の「ゆき」じゃなくて良かったなぁ、などと、よく分からない気持ちが起こる。


「…!それは、えのぐだったのか?」
「あ──いつも、つけられてたから、自分でも、ぬってて…」

顔から流れたペイントに、目を丸くされたが、

「うちにも、みどりのあるぞ!あしたもぬるのか?」
「あした…」

明日──も、ここにいるんだろうか?自分は。
先ほど食べさせてもらったご飯も、夢なんじゃないかと、未だに思ってしまうのだが。

だが、幸村は、「ぬるとき、みせてくれ!」と、懇願してくる。


…夢じゃなければ良いな、と浮かんだ。




「おちぬ…」

「(…あ)」

髪を洗ってくれるのだが、やたら時間をかけるなぁ、と思っていれば…


「…こっちは絵の具じゃなくて、もともと、この色なんだけど…」

「──!!」

…無理もない。
こんな明るい色の髪の子供など、そうゴロゴロいやしないだろう。

他の者と違うこの髪色は、好きではなかった。
何をしても目立つし、常に帽子やフードで隠し、暗闇に紛れ生きて来て、


「ほ、ほんとうかっ?」
「ぶわっ!?」

興奮気味な声が出たかと思うと、いきなり桶で、頭から湯を浴びせられた。

髪にどっさり付いていた泡が入りそうになり、すぐ目をつぶって免れたが、


「ほんとうだっ!すごいなぁ、さすけ!ほんとにカッコいいなぁ!」

「……へ、?…ぇ?」

何がだろう、と面食らうが、


「かみをそめるのは、せんせいがだめだというから、みんなくやしがっておるのだ。いいなぁ、さすけは…!」

聞けば、子供に人気のあるテレビのヒーローが、こんな髪色をしているんだとか。


「おひさまのいろだなっ!それがしの、だいすきないろだ!」


笑う顔が、今まで見た中で一番眩しくて、目の前が霞んだ。


──痛みには、強いはずなのに。

怪我なんて、どこにもしていないのに…





「…さ、すけっ?どっ、どうし…」

「──…」

ぼろぼろ零れるので、塞き止めるように両目をつむる。
が、全く意味を為さなかった。


「あっ、シャンプーだなっ!?す、すまぬ!すぐにながすから、もうすこしつぶって…」

しかし、洗い流しても一向に治まらぬ涙。

半ばヤケになる思いで放り、やっと引いてきた頃に、目を開けると、



(な、なんで…)


それを見た途端、涙は完全に止まった。



「…なんで、ないて…」


「っ、じらぬぅっ…!!

…ざず、けが、…ずっ、と、なぐ、がら…っ」


静かだったのは、声を圧し殺していたせいらしい。

だが、それに気付かれたことが、張っていた糸を断ち切ってしまったようで


「なぜ、ずっと…っ、い゙ぃやだぁ、…っな、ぐな、さすげ、なぁっ、それがし、…らうの、に、…んで、わらって、くれ、ぬっ…」

「………」

うぐ、ひぐ、と、喉を引きつらせながら、頭をポカポカ叩いてくる。
…小さいのに、割かし力強い。

が、その痛みが、どうしてかとても温かく感じられ、



「もう、なかない、から…」


自分も彼の真似をし、口の形を変えてみる。──初めて。

そうすれば、自分の中に湧いたこれが、向こうにも起こるんじゃないだろうかと。



「……わか、った……」


頷き、また笑ってくれた。…あれ以上に。


自分が笑うと、彼も返してくれる。
咲くように。

彼の周りにだけでなく、自分の中にも、また。──何度も。


…彼の前では、もう二度と泣くまいと決めた。

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