ハッピーエンドレス1


雪乃様、相互ありがとうございます♪

「佐幸か慶幸で、内容お任せ」から、慶幸を選ばせて頂きました。

高校生設定。慶幸←政、小十郎、半兵衛。

出来事は少ないのに、かなりの長文に…。
脇役目立つしで。珍しく、政宗がまとも。

周りのお世話になる二人。良ければ、広く温かいお心で見て頂けると、助かります(^^;

場面切り替わりまくりの乱文です、スミマセン…


(全5ページ)














「真田、パワフルー。あんなナリのクセして、すげぇスタミナ」

「うは、超イイ笑顔。あの尻尾みてーな髪、似合うよな〜。目立つ目立つ」

「何で伸ばしてんだろな?つーか、下ろしたら、どんな感じなんだろ」

「あっ、見てみてぇ」

「結構可愛かったりして」

「目ん玉、パッチリだもんなー」


──ワイワイ、ガヤガヤ…




「………」

「あれ?どーしたの、伊達。急に黙っちゃって」

不思議そうに見る級友たちを無視し、政宗は腰を上げた。


体育の授業の最中。自習で、各々バスケやバレーなど、好きなようにやっている。

試合が終了し、他の生徒たちに囲まれた彼のもとへ歩み寄ると、

「幸村」
「おお、政宗殿!次は、ともに…」


「…お前さ、髪切れば」


「は?」

キョトンとする幸村。


「何を突然…」

「…邪魔なんだよ、それ。お前が首回す度、こっちの目に入って来そうになるし。てか、別に要らなくね?何なら俺が切って」

「いっ、嫌でござる!」

「Ah〜?男の中の男が、こんな軟弱な見た目…してて良いのかぁ?」

「なんッ…?」


──そのまま掴み合いになりかけたが、周りのクラスメイトたちにより、何とか問題沙汰にはならずに済んだ…。




────………



(政宗殿め…)


幸村は、むくれ顔で中庭のベンチに座っていた。
あともう少しで、自習も終わる。

トレードマークをけなされ、腹が立ったのが先だったが…


(…あのように、思われておったのだとは)



──“軟弱な見た目”



…実は、結構ショックを受けていた幸村だった。




「…っ!?」


突然、目の前が黒く覆われ、ギョッとする。
ふわっと香る、白桃のような匂い。

パッと見上げると、


「初めまして〜!お揃いだなっ!?」


…逆さまの顔。


ベンチの背に手を着き、何者かが、上から覗き込んでいる。

慌てて振り返ると、


「スゴいな〜、あんた!さっきの試合!どーやったら、あんなに走り回れんだ!?器用に動いてさぁ」

と、人の良さそうな笑顔で、隣に座られた。

長身で、高校生には見えないほどの、がっしりした体格。
少年のような表情との差に、しばし目を瞬かせる。


「あの…」


(『お揃い』とは…)


「あーごめん、いきなり」

彼は再び笑い、


「ホラ、これ──髪っ!仲間ができたなー、と思ってさ」


その、豊かで長い髪を持ち上げた。
先ほど眼前に現れたのは、それだったのだ。


「俺に比べりゃ、あんたのは全っ然マトモだけどな!俺の、スゲーだろ?どっから見ても、俺って分かる。図体もでっかいしで」

「…はあ…」


「へー…、柔らかくて茶色くて、キッレーだなぁ…」

彼は、幸村の後ろ髪を手に取り、感心したように触れた。


(な、何なのだ…)


幸村は目を大きく広げ、唖然とするばかり。



「俺、二年の前田ってんだ。名前は慶次。あんたは一年だろ?何組?担任、誰?」

「は……あの…」


「あんたのこと気に入った!仲良くしよーぜ、なっ?」


矢継ぎ早に質問し、とにかく笑顔のままで、楽しそうに見てくる。


…不思議なことに、さっきまでのショックは、綺麗に消え去っていた。













放課後の教室、机や椅子を、ガタガタと動かす音が響く。


「幸〜、終わった?」

教室に入りざま、手を上げて幸村へ近寄る慶次。


「おお、慶次殿!はい、今しがた」

幸村もパッと立ち、彼に手を振る。


慶次は、教室の騒然とした様子に、「席替え?」

「ええ。今回は、こちらに」

幸村は、廊下側の窓際の席に変わっていた。


「やった!」
「え?」

拳を握り笑顔になる慶次に、幸村は、不思議そうに返す。


「だって、ここなら廊下からも話せるし、休み時間ギリギリまで、いられるだろ?俺が」

まるきり子供のような、嬉々とした表情。



(…また…)


初めは、冗談でこういうことを言っているのだろうと思っていたのだが、彼を知る内、そうではないと、嫌でも分からざるを得なくなった。

…これまでの、どんな友人たちとも違う。
面食らったり戸惑ったりすることの多い相手だが、嫌悪の気持ちは一つも湧かない。

言うなれば、『びっくり箱』を、いつも渡されているかのような。


「これ以上、しつこく居座るつもりかよ?」

いかにも迷惑そうな声で、政宗が横から口を挟む。

「政宗殿、またもや近くですな」
「Ahー、やっぱ切っても切れねー縁なんじゃねぇか?」

政宗は、幸村の斜め前の席らしい。


「腐れ縁ってヤツかな?」

慶次が笑うと、


「俺らにしか分かんねぇ、ってヤツだ。…説明しても無駄だろ」

と、政宗は教室から荷物を持って、出て行った。


「………」
「慶次殿?」

「っあ、うん」

慶次はすぐに幸村へと向き直り、「帰ろう」と促した。


──学年の違う二人が初めて会ったあの日から、約半年。

慶次は、しょっちゅう一年生の教室へ足を運び、自然幸村も打ち解けていった。

明るく人好きのする性格から、幸村の友人たちのみならず、他のクラスの生徒にまで、その人気は及んでいる。

放課後は、こうして二人で帰ったり、たまに政宗も加わったりなど…


「最近、政宗殿はお忙しいようですなぁ」


フルーツ盛り沢山のパフェを食べながら、幸村が呟いた。

今日は、行き付けのカフェに寄り道。
慶次が初めて連れて来た際は、店に入るのをためらっていた幸村だが…

ただ喜ばせたいという、慶次の心遣いが、幸村の緊張や恥ずかしさを、綺麗に取り除いてくれた。

今では、幸村の方から店に誘うことも、しばしばあるほど。


「──だなぁ。…もしかして、恋の到来?」

「んぶッ」

幸村は、口の中のものをそのまま飲んでしまい、

「…っ、…は…っ、破廉恥ッ、な!」

「声、でかいって(今さらだけど)」
「けけ慶次殿が、いきなり…!」

「まぁまぁ。そろそろ、聞くくらいは平気になろうよ、幸も。な?」
「何度も申すが、某には…っ」

「恋は、良いもんだよ〜?」
「ですから…」

「体験者の言うことは、よーく聞いとくもんだって」

と、慶次はイタズラっぽく笑った。

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