バカップル万歳!4
「…しかし、もうコリゴリであろう?痛い目にまで遭って」
と、幸村は佐助の腹を指す。
「──確かに。…でも嬉しかったよ」
(…めちゃくちゃ可愛かったし)
ヘソを曲げてしまいそうな余計な一言は、胸の内に留める佐助だったが。
幸村は苦笑し、
「俺はもう、一生御免こうむりたいな。…あのような思いをするのは、もう…」
「旦那…っ」
佐助は幸村の手を握り──本当は抱き締めたかったが、色々と我慢ができなくなりそうなので止めた──、
「ごめんね、本当に…!一生、もうそんな思いさせないから。旦那が焼きもち妬かずに済むくらい、俺様すげー愛すから!や、もう既にそうなんだけど、これからはもっと露出して」
「ははは破廉恥ぃぃ!!ここ声が大きいわ、佐助!何時だと思って」
「……や、どー考えても、旦那の方がデカいっしょ」
──もう、いつも通りの佐助。
二人並んで、家までの道を歩き出すが…
(……あ)
幸村は、佐助のある異変に気付き、微笑をもらした。
そして、
「佐助。…帰ったら、ともに風呂に入るか」
「──!!?」
「それで、一緒の部屋で寝よう。…昔のように」
小さい頃にはよくしていた、仲直り後の触れ合い。
…ただし、今晩は一人メンバーが足りない。
焦りまくる佐助の足元を見てみれば──信玄の、“つっかけ”
彼は、いつもそれを『ダサい』と笑っていたくせに。
…それほど、慌てていたということか。
そこばかりを幸村が見ていたため、佐助の格好悪い姿は、無事気付かれずに済んだのだった…。
こうして、ミッションは失敗に終わったけど──
「Hey、聞いたぜ?テメー、昨日音楽室で浮気してたらしーな?」
「言い付けちゃおっかな〜?幸に」
ニヤニヤと寄って来る、いつもの邪魔者二人。
俺様は、フッと笑い、
「残念でしたぁ。あれはそんなんと違うの。旦那も、もう知ってるし」
「なーんだ」
「Ah〜?んじゃ、何だったんだ?」
しつこくなりそうなので、俺様は二人に、あの不発ミッションを話して聞かせた。
二人とも呆れて、
「下らねー…。つか、よっぽど嫌だったんだろな、その女。振りでもお前とイチャつくの」
「誰だったの?そーいや」
俺様は、「ん」と、写メを見せてあげた。
「──……」
「…………」
「就ちゃんに断られちゃったからさぁ〜。仕方なく」
「「……元親……」」
「結構イケてるでしょ?なのに、土壇場でごねるんだもんな〜」
(ま、結果、良かったんだけど)
「よくやったな、元親…(何か、弱味でも握られてんのかな…)」
「バカかテメー…?こんなイカつい女、いてたまっか!幸村でもバレバレだろーが!?」
「いやいや、旦那は服装さえ女物なら、お館様ですら、女に見えるようなお人だからね。あ、例えばの話よ?大将に、そんな趣味は…」
「どーでもいーわ!」
政宗は、チカ子ちゃんに激しく気分を下げられたらしく、速効で写メを消去した。あーあ。
「佐助、待たせたなっ。行こうか」
「あっ、旦那(ハート)」
──さぁ、今日も四人での帰宅…
「また、明日ね〜」
「See〜you〜」
「へっ?」
どうしたことか、邪魔ーズは温かく笑っている。…さっきの、あのミッションの理由が、効いたんだろうか…?
こいつらにも、一応は人の心があったってことか。
「では、お二人とも、また明日!」
「んじゃね〜」
俺様も、旦那と同じくらいの笑顔で、手を振った。
『…いつか痛ぇ目に…』
『政宗も、女装して迫ってみたら?』
…あ、やっぱり。
(──てか、痛い目にはもう充分遭ったっての)
…そう。
本当に試練の夜だった。昨日は。
というか、忍耐との戦いだった。
──しかし、俺様は打ち勝ったのだ。
「昨日は、懐かしかったな!さすがに、風呂は窮屈だったが」
「う、うんっ、そーだね!」
(やめて旦那!思い出させないでぇ!!)
「ぐっすり眠れたし。お館様がおれば、川の字だったのにな」
「ホントにねー!」
(…違う川、何度も渡りかけた)
お陰で、新しい英単語百以上覚えられたよ。ありがとね、旦那…
──でも。
俺様は、今まで以上に明るく笑う旦那を見る。
『佐助など、もう──』
あのとき、勢いでも『嫌いだ』と言わなかった旦那。
誤解とはいえ、言ったって良いくらいのものだったのに…
…そんな旦那のためなら、昨日みたいな拷問なんて、いくらでも耐えられる。
「佐助、昨日聞かれたことだがな?」
「え?」
突然の振りに、少し面食らいつつも、そこはいつもの俺様。
普段のように、笑顔で…
「俺が、今までで一番嬉しくて…幸せだったこと。それはな…」
「?」
旦那はニコッと、
「お前に言ってもらったときだ!俺だって、お前の何百倍も嬉しくて幸せだったぞ。そこは譲らぬ!」
──嗚呼、昨日の晩に戻りたい。
…だけど、やっぱり。
これが、変わらぬ事実なのは…間違いない。
これまでも、今も……そして、これからも。
世界で最も幸せなのは、
──この俺様!!
‐2011.9.21 up‐
お礼&あとがき
亜途様、相互ありがとうございます!
『嫉妬か何かで、喧嘩するけど最終的に仲直り』という素敵リクを、木っ端微塵にしてしまい、本当にごめんなさい…!!
まず、脇役出し過ぎですし; 二人の出番を!としてたら、ダラダラ会話やり取り続きになっちゃって。しかも、あの内容…(*_*)
ホントは、もっと爽やかな感じで、付き合ったりしてなくてとか思ってたのに、何故かあんなことに…!
ウザくて乙女な佐助とか、吹っ切れたらドカーンって言っちゃう旦那とか、したかったらしい欲望が出てしまったようで。本当に、言うこときかない脳めが(><)
このような者で申し訳ないですが…;
これからもよろしくお願い致します//
本当にありがとうございました♪
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