とある純情物語5



「なっ、何がおかしいのでっ?」
「い、いや、ワリィ…っ」

元親は、散々笑い終わると、


「嬉しくって、ついな。…お前、それでんな顔して…もしかして、最近何か元気なかったのも」
「何が…!嬉しい!?あっ、あんまりでしょう、そんな…っ」


「…ごめん」
「っ、」

普段使わない謝罪の言葉と、静かに抑えた声に、幸村はまた心が揺さぶられる。


「そりゃ、誤解なんだ。俺は、誓ってそんな男じゃねぇよ。…お前以外に思わねぇし、んなの…」

「──……」

もはやその言葉だけで充分だったはずだが、幸村はその場を動かなかった。


否、動けなかった…。














『女子の制服は、真田くんに着てもらいたいんだよね』


『賛成〜!!!』(ほぼクラス全員)


『おい、ふざけんな!本人いねーのに、勝手に決めんなよっ』
『だから、後で頼んでみるからさ』

『だーめーだ!!破廉恥騒ぎをなだめんのは、俺なんだぜ!?俺の身にもなりやがれ!つーか、こーいうのは、もっと笑える野郎が着るべきだろーがっ?あいつなんか、』

『ほら〜ぁ、元親くんも似合うって思ってんじゃ〜ん』
『アニキ…ちょっと見てみたくないすか?』

『思ってねーし、見せ…見たくねぇっ!』

『仕方ないなー。じゃ、すっごい笑いとれる人に着てもらうしかないね。クラス全員の夢を奪うってんだから、その見返りは保証してもらわないと』



『………………』


『あ、アニキィ……』


『…とりあえず、当日まではぜってー言うな……あいつに』

ブレザー一式を手にし、真っ暗な顔で釘を刺した元親だった。











「──っつーわけだったんだ。ほら、お前が大会で休んでた日な」
「………」


(で、では、あれは……というかコレは、元親殿が着ようと……)


「き、着られたので……?」

「試そうとしたんだが、破れそうでよ。もう、当日だけ破損覚悟で着ようと思ってたんだが、『他の奴が着ることになった』って。ホッとしてたら、まさか…」

渋い顔で、「あんだけ言ったってのによ…お前だと思わねーだろ」


(某のために……)


考えてしまい、内で叫ぶ幸村だったが、


「ありゃ、シャワー浴びようとしてたとこだったんだよ。前の晩、サボっちまったから」
「そ…う、だったのですか……」

幸村は、頭を垂れ、


「申し訳ござらぬ……疑り、いわれのない責め立てを…」
「い〜やぁ?だから、嬉しかったんだって。そのお陰で、お前に振り向いてもらえたんだしな」

「………」

すっかり眩しい彼の笑顔に、幸村の胸はきゅうっと囚われる。



(電車で初めて会って、間近で見たときも…)


つまりは彼だけでなく、自分も、初めから分かっていながら、
…だが、やはりこの鈍い頭では、それを自覚するのに、こんなにもかかってしまって。



「何やら、ひどく回り道をしてしまったような気が致しまする」

「良いじゃねぇか、俺ららしくてよ」

へへっ、と元親は笑うと、


「俺、この二年すっげー楽しかったぜ?お前とダチになれて、色々やれてよう。お前のこともっと知れて、もっと好…き、に、」

「………」

ととと…と詰まり、真っ赤になる元親に、幸村も同じく釣られてしまう。

二人以外に他の誰かがいれば、皆が皆、『今さら何だ』『勝手にやってろ』とヤジを飛ばしたに違いないほどの、恥ずかしい純情カップルである。




「某も、楽しかったでござる。嬉しかったし…」

でも、と幸村は微笑むと、


「今が、一番嬉しゅうござるっ!きっと、これからも…!」

「……っっ」


普段のノリは『破廉恥』だと思われようと、幸村に対しては「絶対紳士」でいたかった元親。

それが、脆くも崩れ去ろうとする第一歩が訪れた、記念すべきこの日。


だが、最後の最後には「ヘタレ」(本人的には「理性」)が打ち勝ち、周りからも一切気付かれることなく、ピュア愛を育て上げていく二人なのだった。











‥余談‥



「うーん…やっぱ、スカートは無理そーだな」
「しかし、上もよく入りましたよなぁ…パッツンパッツンでござる(笑)」

「笑うなよ……あいつら、これで許してくれりゃ良いけど。(ま、無理だろな)」



……………………………



「悪ぃなー、やっぱ下入んなくてよう」
「某も、着替えて良うござろうか?」


「…………」
「…………」
「…………」


※元親の格好はともかく、幸村は、下はスカートのまま、上は元親のシャツとネクタイで…

サイズが違うため、出したシャツはスカートの裾がわずかに見える位置。

袖からは、申し訳程度に覗く指先。

元親のネクタイをそのまま被ってきたため、結び目はゆるゆる。
ついでに、シャツは少し開き気味。




『何という大成功……!!!』



元親は、クラス全員からMVPだと称えられたが、彼らの幸村を見る目に終始牙をむき──

これからは、少しは「萌え」の世情(幸村がどれほどの核兵器かという)を学ばなければと、硬派の殻を破ることを泣く泣く決意したのだった。







‐2012.7.3 up‐

お礼&あとがき

雪乃様、リクエスト頂きましてありがとうございます!

初の親幸リクが嬉しくて飛び付いてしまったのですが、こんなもので本当にすみません; 何という色気のなさ(泣)

まず、またまた女装させてしまい申し訳ないm(__)m せめてネタ隠したかったんで、まえがきで謝れず;
アニキがテレビの女優を注視してたのは、制服が似てて思い出したからなんですね。『アレを着るんだよな…』と、げんなりしてて。
普段は意識しないようにしてたんですが、いきなり幸村がベッドに被さるように来たから、ギョッとしちゃいました。

でもやっぱヘタレ…いや紳士なんですね。実は硬派、とか妄想。友達な親幸が好きで、ついつい(^^; この二人だからこそ、お似合いな気が。二人ともモテるから相手は色々パターンあるとしても、親+幸だけしかならないこの感じ。と思い込んで、満足してます。

あと、ナイトで兄的なアニキも大好きなので、幸村モテ設定まで付けてしまいました。
脇役で、蘭&いつを出せたのも嬉しい^^

冒頭の電車のシーンでは、アニキ内心絶叫してました。『睫毛長ぇぇ…!』とかって。もちろん、名前も知ってた。

雪乃様、毎度毎度こんなんで申し訳ありません;

本当にありがとうございました。

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