とある純情物語1


雪乃様、ありがとうございました♪

「親幸か慶幸で、内容お任せ」

→親幸をチョイス、中〜高校生。(捏造含む)脇役数名が少し。

前半は幸村側、後半は元親側〜二人…な感じです。ほのぼのギャグ系。

初の親幸リクに、狂喜ものだったので(^^;

タイトル通りピュア〜!でもないんですが; すっごくベタなやり取りと展開三昧です。色気なし(;_;)
後半は、ほとんど二人の会話で…いつもこんな感じですみません。

せめてネタ隠ししたいんで、色々あとがきで謝らせて下さい;
シーン切り替わり多し、乱文。


(全5ページ)













中学三年生の秋、塾帰りの幸村は穏やかな眠りの世界にいた。

塾から家までは数十分で、電車の規則的な揺れにまどろみ…しかも、今日分かった模擬試験の結果が良好、志望校の合格点を大幅に越えていたので、ついつい気も緩むというもの。


(ん……)


揺れに身体が大きく傾き、夢うつつの中眉をひそめる。
それまで預けていた位置に、再び頭と肩を戻した。


(気持ち良い…)


身を寄せ、傾けた頭をすり付けながら、『まだまだ着かなければ良いのに』と思っていると、


「…おい。次だぜ、○○駅」

近くの乗客の声に醒まされ、『くっ』と、渋々目を開く幸村だったが、


(──え)


見えたものに愕然とする。

彼がもたれていたのは、手すりでも壁でもなく、


「すッ、すみませぬ……!」

慌てて離れ、ガバッと頭を下げた。

あまりの恥ずかしさに、一瞬で顔に血が集まる。今の今まで、見知らぬ他人に……


「あ、いや…別に重くなかったし」
「誠に申し訳ござらんっ!」

再度謝りながら、『…であろうな』と納得もしてしまう幸村。

自分と同い年か二つまでは年下だろうに、大人と違わぬ──いや、それ以上でもあろう身体つき。座っていても、足の長さが背の高さをありありと物語っている。

歳が窺えたのは、彼が他校の中学の制服を着ていたからだ。(実に信じがたくはあったが)

さらには銀髪に隻眼という派手な容貌に目を奪われ、ただ茫然と見つめてしまう。


『○○〜、○○〜…』

電車が停まり、ハッと幸村は立ち上がり、「すみませぬ、ここで降りるので」と、もう二三は頭を下げてから駅へ降りた。



(ぬぉぉぉ、何という失態…!)


治まらない羞恥を静めるように、幸村は早足で階段を駆け降りるのだが、


「な、なぁ!」
「(えっ?)」

反射的に振り返ると、驚くことに先ほどの彼が息を切らせ立っており、


「お、俺…、電車でいつも見かけてて……あ、あんたのこと」
「……えっ」

自分は初めて見たのに、と幸村は驚き、『まさか、知らぬ間に他にも失礼を…?』と顔色を変える。

何しろ、彼の形相があまりにも──


「も、もし、そういう奴とかいなかったら、おっ、おれと……つっ……付き合ってくれ!」

「……!」


(『突き合って』…!?)


剣道かっ?と、身構える幸村だが、


「うっわー、こんな公衆の面前で愛の告白?だっせーの〜」
「しぃっ!見て見ぬ振りをしてやるべっ。オラたち以外いねぇし、ロマンチックでねぇか」
「どこがだよ?」
「良いから、行くべさ!」


「………」
「………」

小学生に気を遣われ、二人の間に沈黙が訪れる。


『愛の告白』…

幸村は、自分の勘違いを理解すると、


「あの、某……お、男、…なのです…」
「──…」

その顔に、幸村は気落ちした表情になり、


「すみませぬ…私服が紛らわしくて。もらいものでして、一応は男物なのですが……幼い頃から、よく間違われておりましたので」


(親切にして下さったのに…)


「騙すような形になり、誠に…」
「……ぶっ」

その吹き出しに、幸村は「えっ」と顔を上げる。

彼は、笑いを抑えると、


「あんた……どんだけ人が良んだよ。普通なら気持ち悪がるか、キレるとこだろーってのに」
「え、いや、そんなっ」

「やー…やっぱ、あんた良い奴だな。思いきって言って良かったぜ」

「え……」

幸村は目を見張るが、


「俺、長曾我部元親ってんだ。△△中の三年」
「…あ、そ、某は、○○中の真田幸村と申し…あっ、同じく三年でござる」

「そうか」

元親は、今までの様子が嘘のような、明るく爽やかな笑顔で、


「良かったらよ、ダチになってくんねぇか?」













あれから歳月が過ぎ、幸村は高校二年生になっていた。

あの「少々」変わった出会いから二年。元親とは、すっかり親友の間柄である。

中学を出るまでは電車で会ったり、休日に大きな図書館で待ち合わせたり──元親も幸村と同じ高校を志望していたので、二人で勉強に勤しんだ。

その結果二人は揃って合格し、二年連続で同じクラスになれ、自然にそうなっていったのだった。


「客引きで、被りもん借りるんだとよー」
「被りもん?」
「遊園地とかにいる、ウサギとかクマとか、ぬいぐるみみてーなの。中に人が入ってるやつな」
「ああ…って、それくらい、某でも知っておりまするよ」

「ははっ、そりゃ失礼」

このように、いつも幸村を軽くおちょくる彼であるが、それも親しさゆえのもの。幸村も、本気で口を尖らせているわけではない。


あの日の元親の表情を思えば、傷付けてしまったのは間違いないのに、こんな風に接し続けてくれた彼に、幸村は深く感謝していた。

だからこそ、彼が自分の前で見せてくれるこれを絶やさぬよう、これからも『良い奴』と思われるようにありたい、と…


「楽しみですなぁ」
「おー。去年より派手にやろーぜ」

話題は今度の文化祭のことで、彼らのクラスは屋台を出す予定だった。

そういうイベントが大好きな二人なので、子供のようにわくわくしているわけだが、


「あ、あのっ!ちょ、長曾我部先輩!」

ん?と二人が振り返れば、一年生だと思われる女の子が三人。
内一人が、他の二人につつかれながら、


「すみません、いきなり。今、大丈夫ですか…?」
「あー…」

正に、帰ろうとしていたところなのだが、


「ああ、では某は、お先に失礼しまする」
「あ、おぉ…」

「すみません」

女の子たちに頭を下げられ、逆に恐縮しつつ幸村は会釈する。



(何やら、最近…)


こういったことが多い。
一年生の女の子が主だが、時折二年の他のクラスの子や、三年生も。

「アニキ」と、多くの男子生徒から慕われる彼であるが、急にそれ以上になり、幸村はやや不思議に思っていた。いつの間に、そんなに交友関係が広まっていたのか…

二人は、放課後もほとんど一緒にいる(幸村も、元親の舎弟たちと親しい)ので、首が傾くのも当然だった。

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