ねじれる1
優妃様、ありがとうございました♪
※佐→幸 孫市が少し登場。
少々ですが暴力的な描写があり、人が死んだりします。
恐らく、狂まで行けてないです(泣)
色々、最後のメッセージで謝らせて下さい;
長くてすみません〜;
(全4ページ)
その教会の一番奥の壁には、聖母が描かれたステンドグラスが一面にはめ込まれていた。
青を基調にした色合いで、月の光がそこを照らすと、白い床に淡い影が落ちる。その光の筋に浸かるようにして、佐助は身を横たわらせていた。
地に着けている腹や腿、そして頬から熱が奪われる。それと同時に身体の痛みも遠のいていく気がした。
顔を上げると、聖母の姿。抱かれる赤子は白過ぎて、佐助の目には酷く痛い。自分のような者があの場所へ行けることは願うだけでも徒労であるのを、佐助はこの数年で完全に悟りきっていた。
ぼんやりする頭の端で、キィという音がした。――続いて、バタバタと駆けてくる音。
「佐助!」
柔らかな頬と大きな瞳が佐助の顔を覗く。
…その顔は悲しみに歪んでいて。
「だん、な…。駄目だよ…こんな時間に…」
幸村は、佐助の服をめくり上げる。
「……っ」
佐助は少し笑い、
「身体測定…終わったから、さぁ…」
「…っ、佐助」
「大丈夫だって。また夏になればプールがあるから」
「まだずっと先のことじゃないか…っ」
「大丈夫だよ…」
幸村は顔を歪ませ、涙を必死に堪えている。
笑った顔が好きだと佐助がいつも言うので、健気にもそれを守り通すつもりなのだ。
本当は佐助は幸村の顔ならどんなものも好きで、実を言えば今見せてくれているものこそが一番好きだったりする。
…自分のことを、そんなにも心配してくれて。
この瞬間は自分のことだけを考えてくれている、そう思うと頬や胸が熱くなり、頭が甘く痺れていく。
「こないだおじさんがやってたゲームでさ、こういうのあったでしょ?光ってるとこに入ると全快するやつ。…何か、似てない?」
「あれはゲームだ…」
「ええー…旦那のくせに現実的ー」
佐助が口を尖らせると、幸村が無言で彼を背負った。
――気付いているのだ。さらされることの少ない足の裏に焼き付けられたものに。
身長はわずかに佐助の方がある。
が、体重は。
「今日の夕飯はお前の好きなやつだった。
…母上は、また沢山作っておった」
幸村が喋ると、その背中から佐助の身体に振動が伝わってくる。密着した部分が熱い。鼓動が速くなり過ぎて吐きそうなほどだ。
…しかも、情けない。本当なら、幸村が憧れるような強くて逞しい男になって、同情からではなくその心を自分に引き付けたい。今のままでは、いつか終わりが来る。きっと見放される。何年も哀れに思い続けることなどできるはずがない、それはこれまでに飽きるほど経験してきた。
その日は、幸村の家へ泊まらせると、彼の両親が上手く電話で言ってくれた。
幸村に似て、心の優しい夫婦。
『あの話…どうなった?』
『何度言っても、向こうは頷かないみたい。父も相当苛立ってる』
『…くそ。育てる気なんてないくせに』
『養子になれたら、幸村とも…従兄弟みたいな感じかしら?喜ぶわよね、きっと…。あの子、佐助くんが大好きなんだから』
『ああ…。あいつらのせいで…』
――数週間後、佐助の家が全焼し、遺体が中から二体発見された。
佐助はいつものように庭の倉庫に閉じ込められていた為、駆け付けた幸村たち家族の指摘により一命を取り止める。
そして、佐助は幸村の母方の実家の跡継ぎとして養子にもらわれた。
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