つまりは結局5



「幸村、すまねぇ!!」

「えぇっ…?」

突然、床に膝を着けたかと思うと、額をも同じくする元親。…つまり、土下座。

幸村は、さらに驚くが、


「俺、あの後すぐに後悔して──したくせに、今まで謝りにも来なかった大馬鹿野郎なんだが…、…本当にごめん、あんなヒデェこと言っちまって…」

「……」

元親の真剣な顔付きに、返答を飲まされる。


「お前がそんな奴じゃねぇっての、分かってたのによ。…勝手に、すげぇ置いてかれたような…、線引かれたような気がして、──拗ねちまって」

「す、拗ねっ?」

幸村は目を見開くが、


「本当悪ィ…。俺、知らねー内に、お前のことえれぇ気に入ってたみてーで。でも、政宗とお前って、よく二人の世界に入るだろ。政宗、勉強しねーだけで、結構賢いしよ。また、二人の共通点が増えんのかよ、とか…俺なんかといて、話合うのかよ、とか…」


「ただの焼きもちじゃん」

「…佐助」

様子を見ていた佐助が、冷めた声でツッコむと、


「そういうこと、っす…」

肩をすくめ、元親は自身を嘲笑った。


「では…」

「だから、学校辞めねーでくれよ。俺がああ言ったように、これからもつるんでくれねぇか?…言える立場じゃねーのは、よっく分かってんだけど…」


「そんな…それは、こちらこそ…っ!」

少し涙目になりつつも、やはり理解は早いらしく、
…幸村の顔は、歓喜に満ち溢れていた。


「先ほどのお言葉、しかと頭に刻みましたぞっ?某、記憶力は自慢しても良いくらいですので、『忘れた』なぞ通じませぬからな」

「おぅ…っ!男に二言はねぇぜ」

何とも爽やかな光を撒き散らしながら、二人は手と手を取り合う。



「盛り上がってるとこ悪いけど、…時間、大丈夫なの?」



──はっ



「そうだった!…やっべぇ、試験終わるまで、あと…三十分!?急げ、幸村!」

「えっ、試験っ?」

幸村は面食らったように、

「試験は、明日では?昨日、連絡網があったと、佐助が…」


「これ以上、旦那を辛い目に遭わせたくなかったからさぁ。この機会に、違うとこに入れ直そうと思って」


「なぁ…っ?佐助ぇ!」

「言ってる場合じゃねぇ、行くぞ!ありがとな、サスケさん!」

幸村は引っ張られる形であったが──バタバタと、外へ駆けていく二人。



「…何がよ」

佐助は呟くが、ああ、時間を教えてやったことか、と理解する。



(『友達』できて良かったね、旦那…)


口ではああ言いながらも、小さい頃から面倒を見ているのだ、その思いは万感のもの。

『お使いメモ』の平仮名使いは、未だに彼を幼い子供だと思ってしまいがちであるから。(大き過ぎる愛情がゆえに)

佐助の表情は、子の成長を喜ぶ親同然でありながらも、手元のチラシの裏(白)には、




“ 銀髪、殺、友達以上、死 ”



…などの文字が、びっしり書かれていた。













試験時間内ギリギリであったが、幸村は満点を取り、元親は何とか合格ラインを越えた。

驚いたことに次点は政宗で、「俺、やりゃできる奴なんじゃね?」と、自画自賛を繰り返していた。


最初から、学校側が幸村のような天才児を逃すはずがなく、試験に出なくても合格にするつもりだったらしい。
が、それを生徒の前で言うわけにもいかず、担任教師がまごついている隙に、元親は教室を飛び出たのだった。


試験の結果により、幸村は一躍有名人、かつ正しくヒーローのように奉り上げられる。

“見た目に反して強いだけでなく、頭もキレて、であるのに天然だなんて、『萌え』の極みじゃねぇか(@゚▽゚@)”…といった次第で。

(学校には、政宗のファンが多い。彼らは政宗に憧れているので、思考も嗜好も似るのだ、きっと)

そして、そんなヒーローたちに近付こうと、生徒たちは喧嘩だけでなく、時々授業にも出るように変わっていく。

教えてくれと大勢の生徒から群がられ、幸村の勉強嫌いも、大分改善されたようにも。


政宗は、「絶対、この三人で行くからな!」と、あのテレビ番組への出場の夢を大きく宣言し、二人を笑顔にさせた。










「今度、うちに遊びに来て下され。佐助が是非に、と」
「Huーm?よーやく会えるわけか。楽しみにしとくぜ」

政宗は本当に楽しそうに笑い、幸村たちに手を振った。


彼と別れた後、普段のように他愛のない話をしていた二人だったが、


「…俺よぉ、中学んときお前に嫌なこと言った奴らに、感謝してっかも」

「──…」


元親は軽く笑うと、

「さっすが秀才。すぐ意味分かってくれたか」


「…と、うぜん…でござる」

顔を赤らめながらも、ごもごも応える幸村。

あまりつつくのは上手くないと知っているので、元親もそれよりは触れない。


「あ、そうそう──ってよ、どういう意味?」
「ああ、それは…」

元親は、ふんふん、へえぇ…などと、相槌をとる。

最近、こういう会話が多くなった二人。


「やっぱ、スゲーなぁ。…って、ついお前に聞いちまう。自分でやんなきゃ、意味ねーのに」

「あ、でも…」

慌てる幸村に元親は笑って、


「じゃねーと、一緒にクイズ出られねぇし、大学とかも行けねーし。一緒の」


「元親殿…」

──幸村は、瞬時に感動の眼差しと表情へ。

それを受け、元親も照れた風に笑う。


「そういやよ、お前でも、まだ勉強してぇもんってあんのか?大学行っても、全部知ってることだったらどーする?」


幸村は吹き出して、

「元親殿は、某を全知全能とでもお思いで?まさか、まだまだ知らぬことだらけでござるよ」

「マジか?だったら、俺の立場はどーなんだよ。お前が全知全能だとしても、オリャその半分の半分以下だぜ、きっと」

はぁあ、と溜め息をつく。

それに幸村は、ずっと笑っていたが、


「そんなことはござらぬよ。元親殿は、某の知らぬことをご存じでおられる」

「バイクとかはなー?そりゃ…」

「それもそうですが、某が一番知りたいことを──です」


「?」

元親は首をひねり、


「…意味分かんねぇ。分かりやすく言ってくれよ、難し過ぎんぜ、先生。…つーか、これじゃ、やっぱお前が分かってて、俺は分かってねーんじゃねーか!」


幸村は、「おぉっ」と声を上げ、

「そうとも言えまするなぁ。いや、元親殿は、やはり冴えておられる」

再び笑って、


「某に解ければ、元親殿も知っていたことになるのでござる。なので、そのときを楽しみにしていて下され」


(何じゃそりゃ…)


やっぱ、秀才の考えるこたぁ難しいわ…と、元親の首の傾きは増していく。


──まぁ、よく分からないままだが。

とりあえずは、何かの分野で佐助(さん)と政宗を越え、自分もやればできるのだということを示してやりてぇなぁ…

と、漠然に思っていた元親だった。







‐2012.2.2 up‐

お礼&あとがき

妃柴夜様、リクエスト頂きましてありがとうございます!

「政・親たちが幸村のことを馬鹿だと思っていて色々な問題を出すが全部正解されて、実は頭が良いことを知るみたいな話(幸村が頭が良い設定ならどんな話でも○)」

という、素敵リクだったにも関わらず…!(><)

確実にこんな話ではないだろう、自分よ!と、思いながら…。書いてる最中、何度土下座させて頂いたことか(TT)

幸村が頭良いっていう重要なとこ、すっごい描写少ないし。ちがぁぁうぅ、とギリギリしたんですが、本当に違うものになってしまい…誠に申し訳ないです。

勝手に親幸ぽくしたりと、他も色々めちゃくちゃで。友達っぽい親幸を夢想してしまう、私の悪いクセが止まりませんでした。

こんな奴ですが、もし良かったらまた遊びに来て下さい(~_~;)

本当にありがとうございました。


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