つまりは結局3
「身代わりって?…もしかしてアレか?サスケってな、お前の双子の兄弟?」
そんで、そっちはすげぇ天才とか、そーいうオチかと思えば、
「いえ、違いまするが…彼は、変化の術が使えまするので」
「──…」
「分身の術も使えるのですぞ?」
「…そーかそーか」
よしよし、とでも言うように、元親は幸村の頭をポンポン叩く。
こいつがこうなったのは、サスケのせいだったんだな、とようやく理解した。
「某、その日は三年生の△△殿と約束しておるので…試験どころではありませぬ」
「バカかてめーは!ほざいてる場合かよ!?退学すりゃ、喧嘩もできねんだぞ!」
政宗は激怒しついでに、
「来い!ぜってーパスすんぞ!全員で特訓だ!」
と幸村を引っ張り、元親にも目で誘いをかける。
(どーしても退学させたくねんだな…)
その様子に苦笑が湧いたが、元親も悠長に笑っていられる立場ではない。
…幸村は、最後まで『勉強は嫌だ』と、抵抗をやめなかった。
学校側は、『普通の方法では無理だ、もしくはこれならば生徒のやる気が出るのでは』…などと考えたようで。
毎年行われるテレビの、某クイズ番組に出場でもできれば、『賢い学校だ』と思われ、大きなイメージアップに繋がると。
それで、試験問題もその番組の過去問題から出すので、『覚えるくらいはしてみせろ』とのお達しである。
そこで、三人は図書室にて、問題集に励んでいたが…
「Hey、いい加減にしろ幸村!退学してーのか、アァ!?」
「…勉強は、嫌でござる」
よほどひどいトラウマがあるのか、幸村は未だに取り組もうとしない。
「しかしよぉ、覚えりゃ何とかなんだぜ?政宗は、オメーに学校辞めて欲しくねんだよ」
「Ahー!!?」
政宗は火を吹くが、
「(政宗殿だけでござるか…)」
「んぁ?何か言ったか?」
「いえっ、何も」
幸村は、ごまかすように笑う。
「聞こえてんだよ、この野郎…──どーせ、お前なんか勉強したって落第だ!こんな問題、読んでも意味すら分かんねーだろ、Ha!」
怒りが増したらしい政宗は、問題集を広げ、
「一回やりゃ、解放してやる」
そして、そのバカさ加減に大笑いしてやる──という気持ちを抱きながら、狂暴な笑みを向けた。
(無自覚の嫉妬により、凶悪化した模様)
見せられた幸村は、しばらく黙っていたが、
「…やっても、仕方のうござる」
と、呟く。
「Ah?何が」
「やるだけ無駄でござる」
その答えに、政宗は呆然とし、「…諦めるっつーわけか?」
「まさか…」
幸村は問題集を手に取ると、すぐにまた返した。
「──…」
「こんな問題、誰も知らねぇって。お前だけじゃねーよ、これから覚えりゃ…なあ?政宗、んな怒んなって」
元親が幸村を庇い、政宗を窺うが、
「?」
問題集に釘付けになっている彼を不思議に思い、手元を覗くと…
“次の漢字の読みを答えよ。
霰/霙/ 海鼠/海驢 御凸/靨 集る/舐る”
→あられ/みぞれ/ なまこ/あしか おでこ/えくぼ たかる/ねぶる
“1段目は1×1個、2段目は2×2個のレンガを使い、200段のピラミッドを作るとき、使われているレンガの数は?”
→2,686,700 個
“牛乳を温めると膜ができる現象”
→ラムズデン現象
“下手な役者という意味の、『大根』。英語では”
→ハム
“『雨』の字を含み、涙を流すという意味があるのは”
→時雨
“トートバッグの『トート』の意味”
→運ぶ
“英語で『ターバンシェル』”
→サザエ
“英語で『猫のゆりかご』という意味の遊び”
→あやとり
…………………
──それ以外も、全問正解。
「幸村ァ!テメー、答え見やがったのか!?」
「答えは、政宗殿がお持ちではござらんか」
「…あ」
手中を見て、唖然とする政宗。
「じゃ、マジで…──え、お前、何?もしかして、頭良いわけ」
「え?」
「…そういや、お前どこ中だ?聞いたことなかったな」
「はぁ…」
幸村は首を傾げ、「◇◇中ですが」
「……」
「……」
それを聞き、同じようにポカンとする政宗と元親。
…そこは、全国でもかなり有名な進学校だったから──である。
「マジかよ…!何で、んな奴がこんなとこ…!──じゃあよ、この問題は?」
「××ですなぁ」
「すげ!…おいおい、んじゃお前、仕方ねー…って、そういう意味かよ。…うわ、何だよ余裕なんじゃねーか!つか、俺の今までの時間を返せ!」
「えぇっ、そんな無茶な…っ」
政宗は、幸村を羽交い締めにしながら、
「俺が本気出しゃ、こんなもん速攻クリアだ!見とけよ、ぜってーお前にゃ負けねー!」
と、宣言する。
だが、その顔は嬉しそうで…
幸村が退学を免れることに安堵し、意外な長所の発見にも心から楽しんでいるようだ。
しかも、ライバル心にも火が点いたとなれば、笑みも一層増すというものなのだろう。
俄然やる気が上がったらしく、
「俺、もう帰るわ!家で特訓する」
と、政宗は図書室を出て行く。
「……」
「……」
嵐が過ぎた後のような静けさに、残り二名はボンヤリしていたが、
「…帰るか」
元親がポツリと言うと、幸村は「はい!」と、解放された喜びも加わり、ニッコリと笑った。
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