彼らなりの求愛4







「まぁさぁ…あいつらの気持ちが嘘じゃない、ってのは認めてやるよ?だけどさぁ…」

「ん?あいつら?政宗殿と慶次殿のことか?」

「そぉ。やーでも、あれはナイわ。ないない。どんだけ甘やかしゃー、気がすむわけ?あんなこと続けてたら、旦那一気に虫歯になるわ。寝不足になるし、本当の気持ち知ったら『破廉恥』叫び過ぎて、血管切れる」

「はぁ…」

「──あーだこーだ──」



………数時間、経過。



「──やっぱねぇ、甘いだけじゃ、絶対為にならないと思うわけ、俺様は。愛っつーのは、もっとこう」

「佐助…」


「…え?」

旦那のモジモジした声と表情に、俺様の口は止まる。


(どどどしたの、旦那!?まさか、昼間からそんな──)

と、思いながら、全く咎めるつもりなく受け入れようとすると、



「これ……食べても良いのかっ!?」


(へ?)


何が、とテーブルに目を向けてみれば…


「!?」


誰の誕生日でもないのに、チョコレートのホールケーキ、山積みになった三色団子や、みたらし団子、ドーナツ、クッキー、おはぎ、等々…


(何この、無節操菓子群!)



「?帰ってから、ずっと作っておったではないか。今日、何かあるのか?…もう、匂いに耐えられそうにないんだが」


(えぇぇぇ!!?)


お、俺様、無意識に…!

自分のことながら、血の気が引く。



「えぇ、と…何でかな…。何か、ちょっと疲れたからかな?他人の家に行って。で、甘いものが欲しくなったのかも…」

焦りながら言い訳すると、


「そうだったか…大丈夫か?では、一緒に食べるとしよう?」

心配してくれつつ、目の前のお菓子に涎を流しかねない旦那。



……くそっ、可愛い……


それが、俺様の手によって作られたもののせいであるからこそ、嬉しいし興奮…いや、そんな破廉恥な意味じゃなくて。


(結局、俺様も甘やかしてる…)


自分を諌め、旦那を見ると──何より大好きな眩しい笑顔。

…何年、これに耐え忍んで来たことか。


「俺は、楽しかったな…」

「ああ、そりゃね。向こうの人たちも、良くしてくれたし。俺様も楽しかったよ?ちょっと気疲れしただけ…」


「──旦那?」

さっきより笑顔になった気がし、俺様は首を傾げる。

すると、


「佐助が、いつもより俺の近くにいようとしてくれたから、嬉しかった」


──と、照れたように言う旦那。


『照れた』ように



え、誰が…………誰に?



「だんな、あの…」

「高校に上がって、さすがに前のようにはと思っていて──お前もそうなんだろうな、と。だから…」

旦那は、また恥ずかしそうに笑うと、

「すごく良い友達ができたし…お前も楽しそうだし、俺も嬉しい。…だが、彼らより俺の傍に来てくれていたことが、実はもっと…」


「あのね!当たり前じゃん!てか、違うって…。俺様がそう見えるのは、旦那が楽しそうだからでしょ。旦那が嬉しけりゃ、俺様も。

──俺様も、ホントはいつも近くにいたいよ。旦那が、俺様よりあいつらの方が良いってなったらどうしようって、焦ってたんだって…」

「そ、そうか…」

口元を緩め、俯くその姿に、


(旦那も、俺様のこと結構意識してくれてたのかなぁ…?)


そう思い、つい笑みが湧いてくる。

何しろ、想いを伝えたのは幼児の頃で、交わした約束を覚えているか…理解していたかどうかも、怪しい。


(まぁ、またすれば良いだけの話なんだけどさ)


…あいつらは、結構な強敵であるということが、よく分かった。

俺様を越えようとして、あれだけ甘やかすというのなら、自分は、それ以上のものを与えなければ。
もう、体裁のことは気にしていられない。


「──旦那、これ」
「あ…!」

サッと渡したのは、明日の夜に行われる、格闘技観戦のチケット。
旦那と大将の、大好きな。


「これ、見たかったんでしょ?パソコンの履歴見ちゃった。大将と行って来なよ」

それが、一番喜ぶと知っていたので、俺様も渡すのが楽しみでならなかった。

そのときは、こんな事態になっているとは、思ってもいなかったけど。


「あ……佐助……」

口をパクパクさせながら、頬を染める旦那。
嬉しいけど、それ以上近寄られるとマズい。


(…あれ?)


何故か、旦那は部屋を出て行き──また、すぐに戻って来た。


「これ…っ!」


と、何かを渡す。

──同じくチケット、しかも、


「だ、旦那…っ」


それは、俺様がずっと観に行きたいと言っていた、あるアーティストのライブチケットだった。


「え、本物?…え、マジで?取れたの…っ?嘘、どーやって!?」

珍しく大興奮で、旦那に詰め寄る。


「俺も、やるときはやるのだ。…二枚ある」

「えっ、一緒に!?あ、でもこっち…」

「これは、たまたま見ていただけだ。同じ日だったゆえ、色々検索して…。…政宗殿たちに譲っても良いか?」


「全然良い!」

むしろ、この残ったお菓子もくれてやるよ!



──甘やかすばかりでは、駄目だとは思う。

…思うが、それでさらに幸せも絆も増え、固くなるなら、…気にしなくて良いのかも知れない。

甘くすればするほど、自分にも同じように返ってくる。

ただ、旦那の場合は、それが俺様以外にもなされるということが、癪だが…


(そういう人だから、…好きなんだもんな)



明日は、あの二人にこのチケットと、宣言も一緒に叩き付けよう──

そう心に決め、破廉恥と殴られる覚悟で、旦那の背に両腕を回した。







‐2011.11.8 up‐

お礼&あとがき


ミミ様、リクエスト頂きましてありがとうございます!

「幸村を甘やかす政宗&慶次に呆れる佐助(実は一番甘やかしているのは佐助で、無意識にイチャつく佐幸)」という素敵リクを、こんなことにしてしまいました…m(__)m

甘やかせていただろうか…と、冷や汗ものです。そして、佐幸がイチャつけていたのかも、怪しい;

幸村の出番が少なくて、すみません(TT) この四人好きなもんで、そして、幸村が大好きな三人なもので、奴らばっかりが出張ってしまい。
佐助が、弱妄想家だったり…。幸村が好き過ぎた結果なんですな。
言い訳にもなっていないのですが;

こんなので実に申し訳ないですが、良かったらまた遊びにいらして下さい(^^;

本当にありがとうございました♪


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