二枚目半活劇4







「佐助…」

「旦那、とりあえず病院行っとこうな。そこまで強い薬じゃなさそうだけど…」

幸村を背負い、優しく顔だけ振り返る佐助。

──しかし、相変わらず流血三昧。


「お前の方が重症じゃないか…っ。大丈夫なのか…?」

「平気平気。さっきの頭突きだけだし」
「え?」

佐助は、ニヤッと笑い、


「逆光で、あっちからよく見えなかったみたいだけど。…これ」

と、手の甲を見せる。指にはめられた──メリケンサック。

「あいつの仲間から、ぶん盗ってやった」


「し、しかし、血は…!?」

「これ、偽物〜。あの部屋に置いてあったよ。何か変な、色んな液体。SMで使うのかなぁ」

「……」

幸村の身体から、力が抜ける。


「良かった…」
「良くないよ。ったく、気を付けろって言ったのに」

「…はぁ。ヒヤヒヤしたし、ドキドキした…」
「話聞けっての。てか、何よ?その緊張感のない言い方。んなので済むようなことじゃ…一歩間違ってたら」

「すまぬ」

幸村は、佐助の目に見えるよう、顔を前に乗り出し、

「ありがとう、佐助。…今も、心臓がバクバクだ」

「──…っ、…も、大丈夫だよ…っ」

若干染めた頬で言われ、目をそらす佐助。



「お前に注意された、あの日から……ずっとだ」



(…え…っ?)



「そっ、それ、どういう…」

「後で、お前に…言いたいことが……」





「──旦那?」


静かになった背を見ると、幸村は、目を閉じて眠っていた。


(………)


緩む口元を少し指で押さえた後、再びしっかりと幸村の身体を、両腕で支える。

病院までの道を、佐助は早足で駆けて行った。














「旦那、身体大丈夫?」

「佐助こそ!頭は何ともないか?」

「俺様は、ぜーんぜん」

翌日、もう二人とも普段通りに、登校、通勤していた。


なかなか二人になれず、やっと昨日の話ができたのは、誰もいない、夕方の教室。



「…あ、の…、昨日言ってたさ…俺様に言いたいことって…」

「ああ、それなら」

幸村は微笑んで、「もう、言った」


「そ、そっか。──って、えぇ!?」


(どゆこと!?俺様、聞いてないんだけど!)


混乱する佐助に、ただただ笑顔の幸村。


「えと…旦那…」



『ガララッ』

突然、教室のドアが開き、


「Hey、聞いたぜ猿!」
「真田先生を、救ってくれたんだってな!?」

「へっ…!?」


ドヤドヤ、ゾロゾロと、政宗を初め、クラスメイトたちが入って来る。


「すっげーカッコ良く、隣のビルから窓ガラス割って、飛び込んだんだって!?」

「居場所なんか、野生の勘で嗅ぎ付けたらしいな?お前、どんだけだよ!」

「愛の力ってか…。お前にゃ、負けたぜ」

「血まみれになりながら、戦ったってな。王子に相応しいよ、その根性」


「え、えーと…」


何やら色々間違った話になっているが、幸村は、誇らしげに佐助を見るばかり。


(言いたいって…このこと?)


「最高にcoolな男だぜ、猿飛。見直した…ムカつくが、真田のpartnerはお前ってことみてぇだな」

政宗が、佐助の肩を叩いた。


「伊達…」

ちょっぴり、鼻の奥が熱くなる佐助。

「ありがとう、皆。俺様、必ず旦那と幸せに…」





「──とまぁ、candyはここまでにしておいて、と」

「ムチの時間と、参りますかぁ…」


政宗を筆頭に、今度は、どす黒いものを帯び始める面々。


「…アレ…皆さぁぁん…?」


(まぁ、当然か…?旦那とったわけだから…)


別に、殴られようが何されようが、幸村からの愛があれば…

そう、覚悟を決める佐助だが、



「聞いたぜ…あの噂の出所…

──テメーの仕業だったってな!」





「…………ェ?」



見上げると、皆、笑っていながら、怒りの形相。
自分がよく見せる、器用な表情。…知らぬ間に、伝授してしまっていたのか。


(な、何で…)


幸村を見ると、こちらもまた同じような笑顔。


「聞いたのだ…昨日、彼から。彼が、ずっと俺に、話したくても近付けなかったこと。全て、お前が邪魔していたこと。終いには、俺との……は、はは、破廉恥な、虚言を…っ!」

ボーン!と、幸村の顔から火が上がる。


「真田ちゃん…!無理しちゃダメだよ!」
「てっめー、純情な先生に、何てこと言わせやがる!?この、非道!」

「いっ、いや!旦那、あれはね…っ?」

「それに腹を立て、噂をバラまいたのだそうだ。…つまり、全て…お前のせいだったのではないかぁッ!」


「あああのねっ!あれはその…っ、あいつがとんでもねー奴って、俺様、悪い予感がしたっていうか!だから、防衛策として!」

「テメーが余計なこと言わなきゃ、あいつも、あそこまで暴走しなかったんじゃねーのかぁぁ?Ah〜…!?」

「そーだぜ、先生を危険な目に遭わせて!王子やり直して来いや、その腐った根性!」


「だ、旦那、信じ…痛!あれは、旦那を想っ…ぶへっ!…つ、まり、好…ごふッ」

──ボコボコにされながらも、必死で幸村に訴える佐助。


(………)


幸村は、騙されていたことも忘れ、その姿に胸を掴まされた。


「み、皆、あまりひどくはっ。そのくらいに…」

不安顔に変わり、止めようと近付くと、




「…だから…っ、そこまで悦ばせたいくらい、愛してるってことなんだよッ!」





…シーン…




「…Hey。前の一言は、余計なんじゃねぇか?」

「伊達に言われちゃうなんて、よっぽどだよ、猿飛…」

彼には、その告白は無理だろ…と、少々同情する彼らだったが。





「……は…れん、ち……」


幸村は、蚊の鳴くような声で呟き、カラカラとドアを開け、静かに出て行った。



「──さっきの顔、見た…!?…やっば…俺様、今日ぜってー眠れねぇ…!」

佐助の顔が、みるみる輝いていく。…見ていて、清々しくなるほど。



「…さぁて、whipの続きとするかぁ、guys?」

「オーケー、オーケー。やる気も力も、さらにアップしたことだしな」


その翌日、佐助はこれ以上ない醜男に変わっていたが、その唇からは、ずっと笑い声が絶えなかった。


名誉の負傷が癒え、元の見られる顔に戻った後…

昼休みに二人が仲良く弁当を広げる姿は公認となり、学校の一風景となったらしかった。







‐2011.10.17 up‐

お礼&あとがき


緑のトマト様、リクエスト頂きましてありがとうございます!

「佐助がカッコ良く活躍するけど…(笑)」という、素敵なリクをもらえたというのに。

もう、土下座ですm(__)m
本当に、すみません…!リクの、カッコ良い活躍が、ほとんど書けてなくて。カッコ良くもない気がするしで(TT)

二枚目半というより、三枚目部分が多いという残念さ。佐助大好きなのに、何でかああなってしまう…面目なさ過ぎです。

完全に、自分のやりたかった設定とかを、させて頂きました。
いつものことながら…なんですが。

こんなことで実に申し訳ないですが、良かったらまた遊びにいらして下さい(^^;

本当にありがとうございました♪


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