二枚目半活劇1
緑のトマト様、ありがとうございました♪
素敵リク、「佐助がカッコ良く活躍するけど…」
佐助(高校生)→幸村(社会人)
政宗が少し、捏造脇役数名が結構登場。
活躍するのが、少ない気がします…。
しかも、格好良いのか謎。力及ばず、申し訳ないです><
ギャグ甘…のつもり;
(全4ページ)
「旦那、終わったぁ?そろそろ帰ろうぜ〜」
「……」
「もう、皆帰ってんじゃん。部活終わったのに、まだ何か用事?」
「………」
「ほら、これでしょ?鍵。窓のも全部閉めたから。早く出よ〜。俺様、お腹ペコペコ」
(………)
無言のまま部屋の鍵を閉め、校舎を後にする二人。
校門の外まで出たところで、
「今日も一日、お疲れ様!真田セーンセッ」
ニコッと無邪気な笑顔を見せる、自分よりも背の高い教え子に、幸村は、小さく溜め息をついた。
![](//img.mobilerz.net/sozai/1645.gif)
「全く…。こんなところ、他の生徒や先生方に見られたら…」
ブツブツと言いながらも、定食を食べる手は止めない幸村。
「何度も言うけど、大丈夫だってば。この店、ホント知られてない穴場なんだからさ。見た目も、店っぽくないでしょ?」
相変わらず笑顔で、幸村のグラスに追加の水を注ぐ彼。
いつも、こちらが気付く前に、なされる行為。その度、年上の威厳が損なわれる気がし、居心地が悪くなる幸村だった。
「夜も、俺様が作ってあげるっつってんのに。旦那が断固拒否するもんだから、これで妥協してやってんだよ?ほら、野菜も食べて。だーから、バラバラに食べろってばもぉ」
「う…うるさい、食べておるわっ。──昼飯のことは、誰にも言って」
「ないってば。俺様から言い出したことなんだから。いい加減、信用してよね〜」
「…そんなつもりでは…」
幸村は、語調を弱めて目を伏せる。
大学を出てすぐに就いた、今の学校での教師の仕事。
いきなり三年生の担任を持たされ、初めは四苦八苦していたが、何とか無事に数ヶ月を過ぎることができた。
それもこれも、クラスに心強い支援者(?)を一人、得られたからこそ。
──猿飛佐助。
口ではこう言っているが、彼には、感謝をしてもし尽くせない。
軽そうな見た目に反し、成績優秀。意欲も高く、毎日幸村の元へ、勉強の質問をしに来てくれた。
幸村も、張り切って教えていたのだが、
『…先生、いっつもパンだよな…。しかも、そんな甘いのばっか』
ある日、彼の昼食に厳しい視線を向けた佐助。
独身寮に住み、仕事で手一杯の幸村。弁当を作る暇など、あるわけがない。
『俺様が、作って来てあげるよ!』
てっきり冗談だと思い、幸村も『それは助かるな』などと、調子良く答えたのだが。
翌日、彼は本当に持って来ており、しかもその美味しさときたら、感動もので…
しかし、立場を重々わきまえている幸村は、すぐに断るのだが、
『俺様…先生──旦那には、感謝してるんだ。つまんなかった学校も勉強も、旦那のお陰で、すごい楽しくなって。…力になりたいんだよ、少しでも』
…と、真剣な表情と眼差しで言われてしまえば、幸村にそれ以上突っぱねることなど、できるはずもなく。
彼の迷惑にならぬようにと、いつも早朝に寮のドアの前に、弁当を入れた袋を提げて行ってくれる。
そして、放課後はこうして、毎日通っても飽きない、彼の料理に匹敵するほどの定食屋に、幸村を連れて行く。
…迷惑がって、溜め息をつくのではない。
逆だからこそ、自分の甘えたがりに、ほとほと呆れ、項垂れてしまう。
そして、まだ高校生の彼に自由な時間を使わせてしまい、申し訳ない気持ちで一杯になるのだ。
「…また、何か俺様に気を遣った、変な思考してるでしょ」
気付くと、佐助が笑った目でこちらを窺っている。
「い、いや…」
佐助は、やれやれと言わんばかりに息をつき、
「俺様がこうしたいのって、何べんも言ってんじゃん?」
「しかし…」
「ホント鈍いんだからな…。人に対してだけじゃなく、自分のことも」
「え?」
キョトンと顔を上げる幸村に、
「だっからー…。その顔に、どんだけの奴が…。そのせいで他の学年にも興味持たれてるってのに、性格まで知った奴なんか、完全に落ちちゃってるし。悪ぶってる奴ほど、こーいうのに弱いんだよな、クソ…」
「何だ?」
一人言のように呟く佐助に、眉を寄せる幸村。
「…旦那、ウチ男子校なんだよ?」
「?それが?」
「………」
やはりな、という諦めた顔になりながら、佐助は、
「…だから、大丈夫だって。一緒に飯食ってるとこ見られようが、何してようが。俺様が女子高生だったら、ヤバかっただろーけど」
「なっ」
「まぁまぁ。分かってるってば、旦那が言いたいことは。…とにかく、俺様はそんな風に思ってないから。贔屓されてるとか、調子こいてもねーし。オゴられてもないし、弁当代だってもらってんだからさ」
「う…む…」
そう言われると、幸村は、ますます申し訳なさと、佐助の大人さに首をすぼめてしまう。
五つも年下の彼に、安心させてもらうなど、情けなさの極みである。…が、その言葉に感じる喜びの方が大きいのだから、本当に呆れてものが言えない。
最近では、彼が生徒であるという意識が薄れ、同じ年頃の友人のように見てしまいそうになるのを、慌てて留める毎日である。
「すまぬな、佐助…。いつも、ありがとう」
そう、言うことしかできない。
少しだけ目を伏せ、口元は、どう足掻いても緩む。
「…その顔も…。絶対、俺様の前だけにしといてよね…」
口を尖らせ、わずかに頬を染める佐助。
幸村は、またひどい顔を見せてしまったのだな、と心の中で反省するのだった。
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