敗北からの開幕5




「こ、こここ恋人ぉぉ!?」


幸村の大絶叫に、何を言ったのか、聞き取れなかった三成だったが…


「み、三成殿、違いまするぞ!steadyは、『ライバル』という意味でござる!」


「……………何?」


「ああ!それで、先ほどからおかしな…!?いや、某と政宗殿は、ライバル同士なのであって、恋人などでは、決して!」

「………」

「だ、だから……悔しくて…寂しかったのでござる。…お二人が、新しいライバル同士に…。某は、政宗殿にとって、もうそのような気持ちでいてもらえぬのかと思うと…」


「都合の良いように聞きゃあ、最高の言葉なんだがな…」

政宗は、派手に溜め息をついた。


「──真田」

三成が、ケータイの辞書を見せてやると…


「ま、政宗殿!また某を騙して…っ!」


「ま〜、その意味は、あんま使われねーからなぁ。…にしても、お前の勉強不足が悪ィ」
「ど、どこが!」

「ほら見てみろ、他にもあんじゃねーか、『安定した』『しっかりとした』…こっから、『決められた、唯一人の恋人』って来てんだろーな」
「はぁ…」

政宗はニヤリと、

「俺も、そういう風に使ってただけだ。唯一人の……ライバルってな。──誰かさんは、何か勘違いしてくれてたみたいだが…」


「……きー…さー…まァァァ……」

三成は、腕を震わせるが…


「政宗殿…。──しかし、では…何故、そこまで三成殿に…?」

「Ahー…それはだなぁ…」

「…図々しい…恋人でもないのに」
「んだと?」

「真田、こいつはただ嫉妬していただけだ。お前と私の、あまりの親しさを目の前に、相当な焦燥を感じていたらしい」

「え」
「Waーーit!おっ前!なァーーに言っちゃってんの!?」


しかし、幸村は満面の笑顔になり、

「…そう…だったのですか…。それは、何と…嬉しい…」

「「──…」」

その顔に、すっかり惹き付けられる二人。


「では…某と同じですな。──某も、お二人に対して嫉妬しておりました。何と…政宗殿が…」


(…いや、その嫉妬とは、全然意味違うんだが)


「真田、実を言うと私も嫉妬していた…こいつに。お前は、こいつと一番親しい……それが、妬ましかった理由だ」

「!?」
「三成殿…」
「何故なら、私はお前を…」

「Stoーーp!何なんだテメェ!?いきなり」
「もう、遠慮することもないだろうが」

「んなモン、今までもしてなかっただろ!何こいつ、二重人格?こないだまでの、あいつに泣きついてた、あのアレはどこいった!?」
「知らん」


「…しかし、負ければ某のライバルをやめるなど…何故そのような約束をされたのです?」

若干、むっとした顔で、幸村が政宗に尋ねる。


「そ、それはだな──何より大事なモンだからこそ、絶対渡さねぇ気持ちで、賭けたっつーか…、で、こいつに二度と手出しさせねーためっつーか…──ま、結局負ければ、全部意味ねんだけど…」

「え…?」

「あのときの『steady』は、ライバルじゃなく、こいびっ」

補足説明してやろうとした三成の口を、政宗がほとんど叩くようにして閉じた。



「…初めから、こうして聞いておれば良かった…」

ホッと致しました…と、微笑む幸村。


(………)

三成は、今度こそ心に決めたように、

「真田」

「今度、三成殿のお宅へ、またお伺いしても、よろしいでしょうか?」


三成は、一瞬何があったのか分からず、思考が固まる。

ずっと、言おうとしては叶わなかったことを、こんなに簡単に…


「学年が違うと、大谷殿にもあまり会えず…、竹中殿たちとも、またお会いしとうございまする!」

これまでも惹かれ続けてきた、その笑顔。
三成の目には、今それが一層輝いて映る。



──こんな気持ちも、やはり知らない。



政宗に比べれば、自分はまだまだ拙いのかも知れない。

だからこそ、ありのまま伝える。…それだけは、負けるつもりはないので。

自分には、駆け引きなど不可能。
たとえ、『泣き落とし』だのと、無様な姿だと笑われようとも。


「…無論だ。…皆、お前のことを」


その日、自分は生まれて初めて、他人との関わりで涙するのかも知れない。…聞く答えが、どちらのものであったとしても。


それが、怖いようで同時に楽しみでもあるような──

これもまた、初めて味わう気分だ…と、三成は密やかに微笑うのだった。








‐《余談》‐



「…貴様は、招んだ覚えはない」

「おい、今あの窓で何か黒い影が…!こっち見てたぜ!?」

「あちらは、大谷殿でござる」

「うっわ、何だあの真っ白い奴!女は住んでねーっつってたじゃねーか!ghost!?」

「いえ、あの方は男性…」

「あいつ、何であんなに前髪長ぇんだ…?目が見え…──今、笑った!不気味!」

「お優しい方ですぞ?名は…」





「幸村ー!逃げろ!大猿の化け物」

「どぅわて政宗ェェェェェェ!!」






…結局、三成の告白は流れ、彼は歯ぎしりしたのだが。

政宗は政宗で、三成の背後に控える強力な協力者たちに、かなりの身の危険を感じながら──

昼間なのに薄暗いオーラをまとった、その洋館を後にしたのだった…。







‐2011.9.5 up‐

お礼&あとがき


千歳様、リクエスト頂きましてありがとうございます!

長々な上、あんなことで本当にごめんなさい(;_;)

三成大好きなんですけど、人格色々変えてしまう; 佐助と似て、色々なのが似合いそうだから。基本、不器用で、実は情熱的なのだと思い込んでます(^^;

つい、秀吉とか出しちゃったのは、ああいうの夢でして…!皆、ファミリーで幸せになっとこうよ、と。本当は家康も出したかったんですけど、さらに長くなるわ;と。
オトンたちは、幸村を是非ファミリーに迎えたいらしい。

政宗と幸村がやいやい言うの、ついやらせたくなってしまう。政宗は、そういうのが楽しくて仕方ないと思ってる、と思いたい(^ω^)
で、恋人的な雰囲気に持ってくの、ついつい逃しちゃうとか。

というか、ヘタレにしてしまう私が悪いのですが。

とにかく、本当にすみませんでした(><)

やらかしてしまい申し訳ないですが、良かったらまた遊びにいらして下さい(^^ゞ

本当にありがとうございました♪


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