初めての1


雪乃様、ありがとうございました♪

※慶次×幸村。慶次が嫉妬する内容です。
甘…;?高校生。
とてつもなくありきたりな展開で申し訳ないです…(涙)

最後にご挨拶&あとがき置いています。

(全3ページ)













五年間、片想いをし続けて。
相手のことを考えれば諦めるべきだとひたすら隠してきたけど。
偶然二人になれたときに、いつものように上手くすることができなくて――明かしてしまったこの気持ち。
だけどお前は優しいから、俺の想いを無下にせず、願いを叶えてくれて。
それならば、と。ゆっくり時間をかけて、何よりも優しくして、お前の気持ちを俺に向けさせると、そう心に決めた。



「よ、まだやってんの?」
「ああ、慶次殿」

幸村は、ずっと机の上に向けていた顔を上げ微笑んだ。情けなくも、それだけのことで慶次の胸は大きく跳ねてしまう。
もちろん、表面には出すはずもないのだが。

幸村は、日直の最後の仕事、日誌の記録を仕上げていたところだった。

「うーむ…。最後の文がどうも」
「もー真面目なんだからなぁ。何だっていーじゃん、そんなの」
「慶次殿はいつもそのように…。先生が読まれるのですから」
「そうだけどさぁ…。早くしないと遅くなっちまうよ」

窓からは大分地平線に近付いた西陽が柔らかく射し込んでいる。
窓際の席なので、それがよく感じられるのだ。

「す、すみませぬ…もう少し」
「まぁ、いつまでも待つけどさ」

何気に言った一言だったのに、幸村はやや頬を染めて再び日誌に目を下ろす。
…不意打ちなのはお互い様で、慶次はその顔に惹き付けられながらも、隠している胸の音が大きくなるのを感じていた。

陽光が、二人を照らす。
幸村の元々茶色い髪の毛は、今や紅いと言ってもいいほどで。その一本一本がきらきらと輝いて見える。
見た目通りの柔らかい質だというのは既知ではあるが、他の場所には触れたことがない。

…手でさえも、まだ。

付き合って半年。…どうなのだろう。分からない。相手が相手なだけに全く見当がつかないのだ。
絶対に、嫌われたくはない。
五年も待った。だったら、たった半年はやはりまだまだ全然、というところだろうか。


…髪だけでなく、睫毛まで光っている。

どうしたら良い。目が離れようとしてくれない…
――その唇を見つめていた。


「…慶次殿…」


知らずに、その前髪に手を運んでいた。慶次は慌てて、

「なっ…、んでもない!ごめん!」
「い、いえ…」

夕陽を浴びる幸村の顔が赤面しているように見えてしまい、自分はよっぽどだなと恥じ入る。

「終わった?」
「あ…はい」
「じゃ、出したら帰ろう」
「はい…」

いつもの笑顔を見せると、幸村は安心したような顔をする。

危ない危ない。好かれる前に逆のことをしてどうするんだ、と慶次は頭の中で自分を諫めていた。









それから一ヶ月ほど、幸村の通っている道場の試合が近いとかで、二人は一緒にいる時間が大幅に減っていた。
しかし、慶次は内心安堵もしていた。

…あれから、どうしても意識をしてしまって。
手を繋ぐどころか、その先のことがしたくて止められそうにないのを会う度に制御する。

…正直、毎日だとキツい。


「慶次殿!」

どきぃっ

「よー。どーお、調子は?」

バクバクバク…

「はい、お陰様で!…あの、今日…」

慶次は久し振りにその顔をまともに見たことに、あり得ないほどの動悸をきたしていた。

「あ、あーあー、分かってるって。今日も道場だろ?頑張れよ!」
「あ、いや――」
「あっ、俺もそろそろバイトだ。んじゃな、幸!」
「あの――」

――慶次は、逃げるように駆け出す。

「……」

残された幸村は、消沈した面持ちで、その場を後にした。

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