慟哭の夜4







「…幸?」

「え…」


最近めっきり会うことがなかったというのに、何故今日に限って。

…二度も。


「偶然だなー…。元気?」

慶次はどこかよそよそしく尋ねてきた。落ち着かない様子でもある。

「はい…。慶次殿は…」

「あ、俺…っ、ちょっと…人と待ち合わせてて」

慌てたように周りを見渡す。
幸村でも、すぐに推測できた。


「あ――。…美しい方ですな、慶次殿にお似合いの…」

「え?」

聞き返され、自分の苦手とする話題だったのを失念していたのを思い知りながら、


「すみませぬ、故意ではなく…今日、たまたまバイトの後お見かけしまして」

「バイト?…見かけたって何を?」

「あ、ですから――慶次殿と、女性が…。恋人…なのでしょう?…某、すぐに立ち去り…」

と、幸村が踵を返そうとすると、


「…慶次殿?」


慶次が幸村の腕を掴んでいた。



「いやいやいや…。ありゃ、親戚の姉ちゃんだよ。…てか、あり得ねーよ。既婚者だし」


慶次が、本当に勘弁、といったように片方の手を顔の前で振った。



「……え」


「てか、何で幸はここに?――誕生日…なのに」


と言われても、何と答えれば良いのか。
…ここは、幸村が悩み事を抱えたときには、必ず来てしまう場所だった。

高台から、下の街の灯がよく望める。



「…佐助とうまくやってる?」

「……っ!」


はは、と慶次は笑うと、


「俺…余計なお世話だとは思ったんだけどさぁ…。つい、あいつに言っちまって。――幸を、大事にしてやってくれって」


「……」


「そしたらさぁ…あいつ何か勘違いしてるみてーで。俺がお前に、一切近寄らなけりゃあそうするよってさ。意味分かんねーって思ったけど…」



ふと、幸村の目が慶次の腕に留まった。



「慶次殿、それは――」


慶次は、ハッとそれを隠すと、


「ごめん、返されたのに…。いや、違うんだ。特別な意味はなくて――ただ、自分も気に入ったヤツだし勿体ないかなーなんて…」



「――……」



「……幸?」






「慶次殿……待ち人は、来ませぬ」


幸村は震える声で言った。


その頭の中には、あの顔が浮かんでいた。


…嫌いだと言ったときの、あの顔が。





「あやつは……佐助は……嘘つき…なので、な……。慶次、殿…は、騙されたので…ござる…」



顎を冷たいものが滴るが、拭う気にもならなかった。





「だが、初めから…間違えて、いた…のは。――あやつ、よりも…ひどい……嘘つきは……」







幸村は、泣いた。

ここまでひどく涙を流したのは、恐らく生まれて初めてだ。

胸が痛い。あのとき以上に刺されるように。血が出ているとしか思えないくらい。



――慶次の腕の中で。



その腕にも滴る涙。それは、

ごめん、俺だけが嬉しくてごめん――そう言いながら、流す彼のもの。






…きっと、もう一人も泣いていた。








‐2011.7.7 up‐

お礼&あとがき

久兵衛様、リクエスト頂きましてありがとうございます!

すれ違い、ハラハラ…に沿えてなくてすみません(;_;)これか、慶幸ほのぼのってことでしたが、どうしてもこちらを選びたくて…!
すると、こんなことになってしまい; 本当に申し訳なく。単に三角関係;

それぞれを想う気持ちが何かおかしな方向に…ていうのを出したかったんですが撃沈(^q^)

佐助が病んでてすみません。彼曰くわざとみたいです。

プレゼントは俺様発言は、ホントごめんなさい。攻めが言っても可愛くないヾ(=^▽^=)ノ

本当にありがとうございました!良かったら、また遊びにいらして下さい♪


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