慟哭の夜3







『今日は、俺様ん家に来てよ』

何か企むように笑った佐助。


(……?)


部屋に上がると、真っ暗だが…ほのかに小さな灯りが見える。

「さす…」



「おめでとー!!」


テーブルには、ロウソクの立ったケーキ。
その横で笑う佐助。


「――あ」

「も〜、本気で忘れてた?あり得んでしょ、いくら天然だからって」

クスクス笑う佐助に、幸村は詰まったように、

「う…うるさい」
「さ、消して消して!」

子供の如く言う彼に苦笑しながら、ふっと一息で火を消す。



「――!?」



今度こそ本当の暗闇になった瞬間、佐助が幸村を背後から抱いた。







「…プレゼントは、俺様」






その低い声に、幸村の全身が戦慄した。


……動けない。




頭に浮かぶ……笑顔。




――そのとき、佐助のケータイが鳴った。

佐助は、出ずに切り、


「旦那、そういえばさ」

と、幸村のケータイを取り上げる。


「最近、あいつと全然会ってないよね。…慶次」
「…あ、ああ……」

「じゃさ、消して良いよね。…向こうも、彼女できて忙しいだろうし。これからもっと遠くなるよ」


「……」


「…ねえ。最近、失くし物しなかった?」
「え…」

幸村は、驚いた顔を向ける。

二、三日前に自分の腕から消えてしまっていたブレスレット。


…彼にもらった。



「あれ、俺様が捨てた」
「――……」

「じゃ、消すね」


ピッという音が響く。

それがスイッチになったかのように、幸村の身体は動いた。





「やめろ!!」





佐助を突き飛ばし、ケータイを奪い取る。


「他の者は消しても良い、だが…!」

「――……」



「お、前は…、お前にはついてゆけぬ…っ、俺はもう――」





―――………






クックックッ、と抑えたような笑いとともに、


「――やあぁっと言ってくれたよ」


と、佐助が呟いた。

部屋は相変わらず暗いが、外のネオンの光がカーテンの隙間から射していたので、その顔はうっすら窺える。


「佐助…?」


「旦那ぁ…アンタ馬鹿だよねぇ、本当に」



「え…」


佐助はひとしきり笑うと、


「俺様が、男なんて好きになるはずがないだろ?今までどんだけ彼女いたと思ってんの?知ってるくせに」

「……」


「もー…早くそれ言わせたくてさぁ。だって、こっちから言った手前…悪者にはなりたくなかったし。だから、あんな束縛したってのに。普通ならあの時点でアウトだよ?

…なのに、全然別れてくんないんだもんな。空気読んでよね、ホント。手だって、それで出さなかったんだから。てか、そんな趣味ないし」


「佐助…」


幸村の声は、掠れたものしか出なかった。


「え、何でかって?」

佐助はまるで小馬鹿にするように、


「…俺様さあ、アイツがすごい嫌いなんだよね。旦那は知らないだろうけど、昔彼女とられたことがあってさ。んで、いつか痛い目に遭わせたいなって思ってたわけ。

で、花火のときさ…アイツ、ずっとアンタのこと見てて。――逆のことしてやろうと思ってさ。……でも、参ったよ。慶次がアンタから離れてっても、今度はアンタが俺から離れてくんねーんだもん」


「もしかして、本当に俺様に惚れちゃった?


…でも、残念」



佐助は唇を歪め、


「俺様は…アンタのことなんて――






……大っ嫌い」



「――……」



幸村は、佐助の部屋から出て行った。

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