アイドル3







(帰したくないな…)


家康は、隣で歩く幸村を見ながら思っていた。
向かう先は、保健室。
幸村が器具の金具で少し指を切ってしまったので、遠慮する彼を無理に連れ出した。


「ほら、真田そこ座って」
「…すみませぬ」

教師が不在だったので、家康がガーゼと消毒液を用意する。


「――よし。これで……真田?」

幸村が、目を閉じていた。
…家康は、急に息が詰まる。


「ど…どした?」

「……」


閉じた二つから、涙が流れた。



(△※&*£★!?)



家康は、パニック状態。




「――つ…、…目にゴミ、が…!しかも両目にッ!先ほどからゴロゴロしておったのですが、今……いたたたた!本当に痛い!何でござるかこれ!」


ぼろぼろ涙が溢れていく。


(ゴミ…)


ガクッとなった家康だったが、尋常じゃない痛がりようにすぐ心配になる。

「大丈夫か?目、開けられないか?見てやるから…」
「うー…、いっ、たい…。開けられぬ…」
「が、頑張れ真田」
「うー…」

唸りながら、開けようとするとまたこぼれる滴。
家康は、笑ってはいけないと思いつつ、子供のようなその姿にどうしても笑みが浮かぶ。



――と、そのとき。


「家康ゥゥゥ!貴様、何を――」
「おい、三成!ドア壊れる!」

ピシャーンという破裂音とともに、三成と官兵衛が入って来た。

二人は、幸村の状態を目にして、固まる。


「ああ、二人とも。どうした、何か用…」



「――イー…エー…ヤー…スー……貴、様……」

「お、落ち着け三成っ」

官兵衛が腕を掴み押さえるが、


「許さない……許さんぞ、貴様ァァ!誰の許しを得てこいつを泣かせた!?」

「な!?違うぞ三成、誤解だ誤解!」

「うるさい!言い訳を許した覚えはない!今すぐその口を黙らせてやる!そこになおれ!」

「いや、だからなっ」

「黙れというのが分からんか?もう良い、今すぐにでも」



「ぃたたたたた…!!」



「「!?」」


その声に二人がハッとなると、未だに止まらない幸村の涙。


「三成、誤解だ!真田、目にゴミが入って痛がってるだけだ」
「何だと?」
「喧嘩してる場合じゃ」
「目にゴミ?」


二人はどうしたものやらと、幸村の周りを、あたふたおろおろし出す。


「真田…」

官兵衛が肩に手を乗せ、頬を拭う。
――他の二人はムッとしていたが。

「…ゆっくり開けてみな?目」

「……」

官兵衛の言葉に、幸村はそろそろと開けてみる。


…痛みが、ない。


「あ…れ」

官兵衛は吹き出すと、

「あれだけ出せばな。流れたんだろ、知らん間に」

「――……」

みるみる幸村は真っ赤になり、

「申し訳ござらぬ…。みっともないところを…」

「いや、お前さんがそれだけ痛がるんだから、手強い奴だったんだろ。…それに、そんなのよりもっとみっともないもん見られたから、面白かった」

最後の方はこそっと言ったが――


「…聞こえているぞ、官兵衛」

背後から響く低い声。
しかし、その顔はバツが悪そうに…ほんの少しだが色付いていた。


「ははは、…本当、みっともない…」

家康も、後ろ頭をかいた。



「…?」

「そろそろお迎えが来る時間だな」

官兵衛の言葉に「迎え?」と、三成たちが尋ねた。

「今日は、片倉先生――友人のご親戚なのですが、車で…友人たちとともに迎えに来て下さるとのことで…」

幸村が、嬉しそうに答える。

「おお、そうなのか?ワシも会ってみたいな!」
「是非とも!佐助たちも、石田殿たちにお会いしたいと申しておりました」
「――そうか。私もずっと会いたいと思っていた」

三成が黒い影を漂わせたことは、幸村には伝わらなかった。


「…そうだ。真田、良いこと思い付いた」

官兵衛が、ニヤリとした――













「旦那〜お待たせ〜!」

(…石田とかいう野郎に、俺様たちの相思相愛っぷりをたーんと見せつけてやろうね〜)


「幸〜お疲れ〜!」

(どんな奴だよ、黒田とかいう男は。話じゃガタイが良くて長髪って…俺とカブってんじゃねーか!しかも幸、何かすっげぇ気に入ってるみてーだしよー…。マジ潰す。笑顔で)


「Hey、これからは小十郎に行き帰り出させるからよ、俺も付き合うぜ」

(…どいつだぁ?トランポリンが超絶上手いとかいう奴。俺のライバルポジション取ろうとしやがって。この数日でトランポリン技なんて簡単に手に入れた…勝負しやがれ…!)


三人が笑顔で幸村に近付くと…



「――う、佐助…、慶次殿、政宗殿……」



「…旦那ぁ!?」
「幸!」
「幸村!!」


途端に、慌てふためく三人の声。

幸村は、心の中でドキドキしながら、笑いを堪えていた。

――これが、官兵衛の提案。


(いつもの仕返しでござるよ――)

と、してやったり顔を三人に向けてやろうとすると、





「ふっ――ざけんな、あいつ…!旦那泣かせやがって!!」

「あり得ねぇ!どうやったら幸泣かせたりできんの!?人間じゃねーよ、奴ら!鬼だ!悪魔だ!倒す!」

「上等だぁ……泣かせていいのは俺だけっつーのを分からせてやる!」


「ちょっと、それどういう意味?」
「Ha?うるせーよ、今それどころじゃねーだろ」…………


ぎゃあぎゃあ言いながら、校舎へたちまち駆けていく三人。




「………」


…真っ青な顔で汗をダラダラと流す幸村。

その肩をポンと叩き、小十郎が慰めるように首を振った…。







‐2011.7.1 up‐

お礼&あとがき

遊様、リクエスト頂きましてありがとうございます!

これ、総モテになってますかね; このキャラたちで大丈夫だったでしょうか…;完全に私の好みです。本当は刑部も出したかったけど、無理でした;家康より好きなんですけど刑部。

ハチャメチャな感じですみません; しかし、素敵なリクエストをありがとうございます!3デビューの私にとってはニヤニヤもので。私の願望を果たしまくりでした♪
最近ゲームしてないので、キャラの口調がますます不安定です;すみません。

あと、つい、佐助たちも出してしまいました; 本当、私の自己満…楽しかったです(^^; 佐助を陰湿な奴にしてしまいました。似合うから…

本当にありがとうございました。
良かったらまた遊びに来て下さい♪


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